生き返るマンション,死ぬマンション

図書館の新着図書棚で見かけ,読んでみました。

  • マンションが大量に売り出された1999年
  • 日本のマンションの3割は2000年から2007年までに建てられている

p.33
日本は,かつて円高不況を,平成バブルで凌ごうとした

そしてその平成バブルのつけを,マンションバブルを起こして凌ごうとしたとのことです。
加えて,1997年のアジア通貨危機も背景にあったとも。

p.26-27
(1)建築基準法を改正し,建築確認や検査を民間に開放し,住宅を大量に作れるようにした。
(2)住宅金融公庫の住宅ローンの金利を2%まで下げ,大型ローンを組みやすくした。
(3)マイホームを買った時に税金が戻る住宅ローン控除を,過去最大に大型化した。

ううむ。

  • 10年後,築40年を超えるマンションが162万戸になる

「つまり,今あるマンションの約4分の1が築30年以上」(p.104)
モノである以上建った時そのままではなく,経年劣化し住むには支障が出てきて建替えが必要になってくるのですが,その頃には各戸のオーナーは高齢化して,修繕・建替えの負担に耐えられない,じゃあどうする?ということへの提案が本書では様々な事例を通じてなされています。
それらの事例は読めば感心するのですが,じゃあ自分が住んでいるマンションではそれができるのか(なお私は賃貸でマンションオーナーではありません)?
要するに,マンション管理組合がマンションを経営的視点(=資産価値を維持という保守的な姿勢にとどまらず,資産価値をアップするくらいの積極性が必要)で運営していくくらいの体制が必要である,ということだと,各事例を読んで思いました。
マンションは様々な思惑・事情をもつオーナーたちの共有物であるが,何をするにも合意形成が必要(でもそれはしばしば困難)であるというハードルをいかにクリアできるか,そのヒントは示されている点は評価できますが,実行が可能かというとなかなか困難でしょうね・・・

大学生の日本語リテラシーをいかに高めるか

大学生の日本語リテラシーをいかに高めるか (大学の授業をデザインする)

大学生の日本語リテラシーをいかに高めるか (大学の授業をデザインする)

以前読んだ『アクティブラーニングをどう始めるか』で,
lionus.hatenablog.jp
教員どうしの「ビリーフス」の違いを可視化し共有する手法「チェックアンドシェア」について書かれている本として引用されていたので,読んでみました。
結論からいうと,「チェックアンドシェア」の具体的内容まではいまいち分からなかったのですが,本の主題である大学生の日本語リテラシーを高めるための日本語表現法授業の実践について色々読めたのはよかったです。

p.21
自ら問題を発見し解決するという知的な活動には言語活動の下支えが必要になってくる。問題を理解してそれらを構造化する作業には言語を介した知的能力が不可欠である。分かりやすく言えば,モヤモヤした自分の問題感覚を言語化してまさに問題意識とすること,他者と問題や課題を共有しそれらを解決するためには言語を介したコミュニケーション力が不可欠であること,また自他のコミュニケーションを「メタ化」してその過程をふり返る際にも言語能力は必要であること,さらにレポートや論文の作成,プレゼンテーションのプロセスは言語を介した思考のプロセスそのものであること,などと捉えることができる。

日本語表現指導といっても,実用文の書き方からアカデミックライティングまで幅広く,特に後者については所謂初年次ゼミなどにも非常に参考になる内容だと思います。

「魔女の一撃」=ぎっくり腰とトランジット火星など

今年の8月は,「ぎっくり腰」でにっちもさっちも行かなくなり,ほぼ1か月近くあらゆる生活動作が不自由で,ほぼ1か月を棒に振った印象です。
もともと腰痛もちで,初発は14歳,近所の整形外科でレントゲンなど撮ってもらっても原因特定できず,牽引などしてもらっただけでいつのまにか自然治癒(?)。
次は30歳になった夏,オーバーワークで動けなくなり,寝てばかりいたら,腰痛発症。以後,寝る→朝起きる→腰痛くて体が曲がらない洗顔できない→何となく動いていると緩和してくる→夜寝る→翌朝また腰痛い,が日常的になっていました。
しかし,2013年の夏頃に「自力整体」を始め,その後スクワットも始めてみたら,いつの間にか腰痛がほとんど感じられなくなってよかったなあと思っていたのに,がっかりでした。

今回の経緯を,占星的に振り返ってみたら,どうもトランジット火星が影響していた感じです。覚書として記しておきます。

7月20日頃 T火星獅子座入り 思えばこの頃から,椅子から立ち上がったときなど,何気ない動作で腰が”ぎくっ”とすることがちらほらあった。
8月8日 満月(月は水瓶座)
8月10日~11日 T火星,ネイタル太陽を通過
8月13日の晩 N火星にT天王星&T月合 腰に”魔女の大打撃”,痛みでしばらく立ち上がれなくなる。泣きそう,というかホントに痛くて泣いた。ものすごいやばい感じ。
8月14日 一晩寝て,ひとまず動けるようにはなる。
8月15日 T月@牡牛とT太陽@獅子のスクエア 朝起きて腰痛いなあと思ったが,今までの経験から,朝痛くても,動き回っているうちに軽快することがほとんどだったので,外出したが,時間が経つほど痛みが増していき,夕方頃には痛くて息ができない(呼吸が浅く),座っていると冷汗が出る感じに。今まで経験したことのないやばい感じ。
8月18日 知人から紹介された整形外科に朝一で電話→初診予約8月23日午後に*1
8月22日 新月@獅子座はN火星合T天王星とトライン
8月23日午後 T太陽乙女座入り&N土星セクスタイル T木星はネイタルのアセンダント&N天王星と合,T木星&NAsc&N天王星を頂点としたT土星,T火星の小三角ができていた 整形外科で診察&施術を受けた直後から,日常動作はできるくらいには動けるようになったものの,全体的には痛み半減くらいで,ふとした動作や姿勢で痛みがぶり返すことが続く。
特に椅子に座っていると痛みが憎悪するので,30分以上続けて座り続けないようにするなど注意深く生活。したがって9月頭まで,ほぼ自宅療養状態。
9月5日晩 T火星が乙女座へ移動 9月5日の午後くらいから,ずっと感じていたやばい感じの痛みが感じられなくなってきて,「おや?」という感じ。
9月6日(今日) 朝起きたときから痛みはほぼなし。でもまだ油断したら駄目だと思っているけれども。

昔のはてなダイアリーの方で書いたことがあるのですが,lionusはネイタルのAscがとてもよく効くタイプで,特にトランジット木星が通過するときには棚ぼた的事象があったりするので,それを自覚して以来,T木星アセンダントヒット=チャンスが来たら逃さないぞと何かを待ち構えるようにしています。
T木星は逆行するので,今回のT木星@天秤のアセンダント通過は去年の12月~1月にもあって,その”チャンス”は自分なりにはキャッチできたと思っています。
そして,今年夏のT木星アセンダント通過が今回のT木星@天秤では最後なので,何かな何かなと思っていましたが,今回はどうも,良医=知人に教えてもらった整形外科に出会えたということになるのかもしれません。
まあ”良医”かは,まだ結論は出ていませんが。
この腰痛問題の展開については,今後できれば続報書きたいと思っています。
整形外科教えてくださった知人には感謝です。

*1:今回受診した整形外科は,二回目以降は予約不要だが,初診のみ要予約とのことで。

PROG白書2016 現代社会をタフに生き抜く新しい学力の育成と評価 -2020年大学入試改革を見すえて-

現代社会をタフに生き抜く新しい学力の育成と評価 (PROG白書2016)

現代社会をタフに生き抜く新しい学力の育成と評価 (PROG白書2016)

こちらも,『アクティブラーニングをどう始めるか』→この本で取り上げられていたので読んでみました。lionus.hatenablog.jp
PROG白書2015は大学生版でしたが,lionus.hatenablog.jp
こちらのPROG白書2016は,項目を高校生用にアレンジして実施したものです。やはり大量観察データなので,面白かったです。
印象に残ったポイントなど断片的に:

  • 学力の3要素は独立である

「教科学力」「リテラシー」「コンピテンシー」は相関ほぼなし
→教科学力(英語,数学,国語)がいまいちでも,コンピテンシー,例えば対人基礎力がよかったりする場合もあるので,それぞれの特性に合わせた教育や進路指導の可能性。

p.88
対人基礎力は中・高校時代に身につけたという回答が圧倒的に多い。次に多いのが大学時代だが,統率力を除けば,小学校時代との差は相対的に小さい。

p.89
この調査および前項でみた結果から,大学でのコンピテンシー育成は対自己基礎力や対課題基礎力に集中し,対人基礎力は高校までに育成するのが効果的・効率的と推測される。

※前項でみた結果→高1,高2ではコンピテンシーの伸長はほとんどみられない。
しかし,だからといって大学で対人基礎力育成をしなくてもいいというわけでもないとも。

p.113
対人基礎力は「大学段階では育成しなくてよい」ということではなく,高校段階までに育成される「親密圏の対人基礎力」を社会で求められる「公共圏の対人基礎力」へと拡張していく配慮が求められる。

最後に,高校生の結果だけでなく,某国立大学でPROGテストを2回受験&大学生活に関するアンケートに回答した結果の分析が印象的でした。

pp.109-110
3つの基礎力(対人,対自己,対課題)に共通して,学習態度と学生生活への適応の違いがコンピテンシーの伸長に影響を及ぼしていることがわかる。一方,授業経験や活動時間といった数値にほとんど差がみられないのも,3つの基礎力ともにいえることである。
つまり,単に授業に参加しているだけではダメで,その取り組み方がコンピテンシーの伸長に大きな影響を及ぼすことが判明したわけである。極めて当たり前のことともいえるが,重要なファクトでもある。
アクティブラーニングやPBLは,ジェネリックスキルを効果的に育成する手法である。しかしこれらは,学生が積極的に授業に関与する場の設定方法として,また,その姿勢を引き出す手段として効果的なのである。重要なのは,学生が積極的に授業に関与することであり,そのような学習態度を喚起する仕掛け作りである。有効な仕掛けであれば,必ずしもアクティブラーニングやPBLでなくてもよいのかもしれない。指導者には,アクティブラーニングやPBLを導入して「それでよし」とするのではなく,ジェネリックスキルを育成という目標のために教育手法を改善し続けることが求められる。

PROG白書2015―大学生10万人のジェネリックスキルを初公開

PROG白書 2015―大学生10万人のジェネリックスキルを初公開

PROG白書 2015―大学生10万人のジェネリックスキルを初公開


『アクティブラーニングをどう始めるか』→この本で取り上げられていたので読んでみました。lionus.hatenablog.jp
本書でいう「ジェネリックスキル」とは,「あらゆる職業を超えて活用・移転可能なスキル」「大卒者として社会で求められる汎用的な能力・態度。志向」であり,リテラシーコンピテンシーから構成されるということです。

p.37
ここではひとまず「リテラシー」とは「知識を活用して問題解決する力」のことであり,「コンピテンシー」とは,「経験を積むことで身についた行動特性」のことであると定義しておこう。
リテラシーコンピテンシーの違いを平たくいえば,人間には知識を学んで賢くなる側面(リテラシー)と,経験から学んで賢くなる側面(コンピテンシー)があるということになる。

この考えに基づき項目を作成して,大学生約10万人に対してテストを実施し,分析した結果が掲載されています。大量データの観察で,なかなか参考になります。

p.56
リテラシーが,ジェネリックスキルにおける「合理的(論理的)思考力」を測定しているのに対して,コンピテンシーは「個人の判断や行動の様式(スタイル)を測定し,それが,どの程度仕事ができる社会人に近いか」を判定していると捉えることができる。

「企業内で評価されているビジネスパーソンが実際にどのように回答しているかを基準にして」(p.54)いるため,今の「日本の会社」にウケがいい人材を測定する項目になっているっぽい,ということはテスト結果を見る際には注意しておかねばならない点かもしれません。今の日本の会社でウケがいいことが必ずしも”いい”ことなのか?という視点は残しておく必要があると思います。

  • 潜在ランク理論について

古典的テスト理論とはまた別なテスト理論で,面白そうです。

失敗事例から学ぶ大学でのアクティブラーニング

アクティブラーニング・シリーズ全7冊の,7巻目です。
アクティブラーニング的な手法を授業で使うことの目的,そして授業そのものの目的を見失わず,その目的をよりよく達成する手段を真摯に考えることがすべての基本であると私は思いました。

  • 教員や教育機関に求められる「二重の責任」

p.7
第一の責任は,説明責任である。教員はなぜその手法やツールを用いたのかを説明できる(アカウンタビリティー[説明責任])必要があるだろう。

p.7
第二の責任は,実施責任である。単位を認定し,成績を評価する教員は,教育サービスをすることで生徒の学力(知識や技能)を所期した水準にまで引き上げる責任を負う(レスポンシビリティー[実施責任])。

  • アクティブラーニング3つの失敗

p.13
アクティブラーニングの失敗事例との関わりで補足すると,定義により3つの失敗が考えられる。一つ目は,学生が「アクティブ」ではないような学びである。二つ目は,アクティブであっても「ラーニング」がないことである。そして三つ目は,学生が学んでくれないことを「教員自身の問題(FD)」として考えないことである。

  • 科目目的を判断するためのヒント

pp.67-68
典型的には,自分の科目目的が「知識習得」と「知識応用」のどちらに近いのか

p.68
この違いが重要なのは,実践するアクティブラーニングの形が異なるものとなるからであり,具体的には前者は「講義型」に,後者は「演習型」に近くなるのである。

(1)大学や学校の人材育成目的はあるか?
(2)その科目の学習目的が公的に定められていないか?

  • 自燃型人材と他燃型人材

p.130
第一は,自らが燃え上がり,自分自身がグループ活動に積極的に関わりを持っていこうとするタイプであり,これを自燃型人材と呼ぶ。議論をリードすることがあるため,この意味で「リーダータイプ」という名をつける。第二は,自分自身はあまり目立つことなく,他者を燃え上がらせるように,自分はそのサポートに徹することで満足するようなタイプであり,これを他燃型人材と呼ぶ。これはリーダーを補佐し活かしていくようなタイプとして,ここでは「参謀タイプ:と名づけよう。

「他燃型人材」も評価する素地を作るべきだが,「グループ討論で黙っていれば損する」こと,すなわち,「皆が発言する場で黙っていることは消極的な印象を与え,場合によっては意欲に乏しいと受け止められて損をすることがあることを,教員は学生にしっかり伝える必要があろう。(p.132)」

アクティブラーニングをどう始めるか

アクティブラーニングをどう始めるか (アクティブラーニング・シリーズ)

アクティブラーニングをどう始めるか (アクティブラーニング・シリーズ)

ぼちぼち読んでいる「アクティブラーニング・シリーズ」(全7冊)の6巻目です。
河合塾が大学受験のことだけじゃなくて,高大接続や,大学から社会へのトランジションのことまで視野に入れて調査研究をしているとは知りませんでした。
本書の主題とはまた別に,自分的に新たに知った事柄:

ジェネリックスキルはコンピテンシーリテラシーから構成されること。
コンピテンシーの構成要素については, 河合塾・リアセック監修(2015)『PROG白書2015』(学事出版) が参考資料になりそうなこと(大量調査データっぽい)。
PROGの結果からは,リテラシーコンピテンシーは相関がないこと。リテラシーは学力検査等で測れるような知的コンピテンス,コンピテンシーは教科知識をベースとした能力とは別の側面を測定している可能性。

  • 専門家(ここでは国語教師等)の暗黙知を可視化する方法

p.48
先生方はご自身の暗黙知可された教育新年(ビリーフス)を述べられおり(ママ),個々人は誠実に教育に向き合われていた。「地獄への道は善意で敷き詰められている」と言ったのは誰の言葉か思い出せなかったが,熱心な先生方の「空中戦」を拝聴している私の脳裡をその言葉がぐるぐると駆け回っていた。

p.48
2回目では,各々の教師のビリーフスを顕在化させ,お互いが大切にしていることを相対化するワークを行った。我々が大学教師を対象に用いている「チェック&シェア」という方法を応用したものである。

→「チェック&シェア」について,詳しくは成田・大島・中村(2014)『大学生の日本語リテラシーをいかに高めるか』(ひつじ書房)を参照のこと,らしい。

  • 「権限のないリーダーシップ」という概念

目標設定(明確な成果目標を設定する)/率先垂範(自分がその成果のためにまず行動する)/他者支援(自分だけでなく他人にも動いてもらえるように,成果目標を共有し,それだけでは動きづらい要因があればそれを除去する支援をする)