産業・組織心理学(朝倉心理学講座13)

産業・組織心理学 (朝倉心理学講座)

産業・組織心理学 (朝倉心理学講座)

この分野について堅実にまとめてあるな~とつらつらと読んでいたら,最後の「10. 社会的責任と倫理」でガツンときました。

p.174
組織を行動の単位と考える場合,上述のような組織行動は,「組織」対「社会」という図式における,組織の反社会的行動としてとらえることが適切である。また,シュラウド事例のように具体的に社会的損害を生まなかった場合でも,潜在的な反社会性としてとらえることが必要である。
組織内部のセクシュアル・ハラスメントやパワー・ハラスメントは,組織内部の問題であり,「組織」対「社会」という図式の中では問題を生まないが,潜在的な反社会性に含めて考えることが可能であろうと考えられる。潜在的な反社会性の高い組織は,やがて,反社会性を顕在化させる可能性が高いのである。
本章では,組織の非倫理性を,組織の反社会性ととらえ直して議論する。以後,特に断り書きのない限り,向社会性,反社会性を,それぞれ,倫理性,非倫理性と同値と考えていただいて結構である。

「組織の非倫理性を,組織の反社会性ととらえ直して議論する」という整理方法はすっきりします。
また,筆者の岡本浩一先生は,(組織における)違反を,「個人的違反」と「組織的違反」の2次元に分けて考える必要性を述べておられます。
個人的違反=組織の利益と反して自分個人の利益を図る行動,組織的違反=組織の反社会的行動,あるいは潜在的な反社会性です。

p.186
現在,多くの組織でコンプライアンス専門部署が設置され,コンプライアンスを図るための措置が進められているが,その多くは,ここでいう規定の整備に当たる活動である。しかしながら,この分析に基づけば,そのような活動は,個人的違反の低減には結びつく可能性はあるものの,組織的違反の低減には結びつかないことが予想される。もともとこのような活動の企画は,個人的違反と組織的違反が独立する2次元であるという認識もない素朴な違反観のもとで行われているから無理もないといえるが,なんとも残念なことである。
組織的違反の低減を図るなら,属人風土の改善が必要であり,風土改善の必要性は現時点で一般的に了解されているよりもはるかに高いのである。

ううむ。