企業変革の名著を読む

コンサルタントや大学教授により,12冊の「企業変革の名著」のエッセンスが紹介されている本です。
抜粋やまとめを読んだだけで,元本を読んだ気になるのもどうかとは思いますが,読むべき本のガイドとか,何が話題になっているのかという傾向をつかむのにいいかな,と読んでみました。
印象に残ったところなど:

  • 1 『企業変革力』ジョン・P・コッター著―カリスマだけで会社は変われない 平井孝志(ローランド・ベルガー) より

p.32
最終的に企業変革は,企業文化として組織に根付くまで続けなければなりません。組織は相互依存が密接に絡み合ったやっかいなシステムです。それは最近の必要性から生じたというより,企業の歴史から生まれた強固なつながりです。一部を変えてもすぐに元に戻ってしまいます。それゆえすべてが変わりきるまで,継続することが大切なのです。
企業文化は人の行動に強い影響を及ぼします。一方でその姿を明確に捉えることは不可能です。このような特徴を考えると,企業文化は最初に変えるものではなく,最後に変わるものだということがわかります。つまり,文化だけを変えようとしても決してうまくいかないともいえます。
企業変革はすべてが変わりきるまでの比較的ゆっくりとしたプロセスです。1つの大規模な変革と考えるより,様々なプロジェクトの連続と捉えるほうが適切でしょう。いらだちを抑えつつ,根気強い努力が必要とされるプロセスなのです。

「企業文化ガー」という言説を見るたびに,うん,だけど「文化」って何よ?と思ってしまうのですが,文化は原因というより結果なのかもしれません。

pp.244-245
倫理の問題に対するスタンスは大きく分けて2つあります。一方は性悪説に立ち,悪意を持った為政者を牽制しなければいけないという立場であり,もう一方は性善説に立ち,問題は人の悪意にあるではなくシステム上の欠陥によって起こるという立場です。 

p.245
本書の最大の特徴は,この2つの立場のいずれもが,実態を正しく捉えていないというスタンスを取っていることにあります。つまり,人は悪意を持たなくても,倫理に反する行動を取ることがあるということです。これを「倫理の死角」と呼んでいます。
日本でも,コーポレートガバナンス(企業統治)の議論が盛んになる中で,経営者を性善説で見るべきか,性悪説で見るべきか,意見が対立しています。本書はそこに対する解を示唆してくれているように思えます。

NHKBSの「英雄たちの選択」で,天正遣欧少年使節が扱われているのを見て,歴史の教科書の一記述でしかなかったのが立体的に見えて,少々興味の湧いていたところ,さらに関係する本が紹介されているのを見て,さらに興味が湧きました。