アクティブラーニングの技法・授業デザイン (アクティブラーニング・シリーズ1) &アクティブラーニングとしてのPBLと探究的な学習 (アクティブラーニング・シリーズ2)

アクティブラーニングの技法・授業デザイン (アクティブラーニング・シリーズ)

アクティブラーニングの技法・授業デザイン (アクティブラーニング・シリーズ)

全7巻のアクティブラーニング・シリーズの1冊目です。
監修の溝上慎一先生の巻頭言を引用します。

2014年末に前下村文科大臣から中央教育審議会へ諮問が出され,初中等教育の次期学習指導要領改訂のポイントとしてアクティブラーニングが示された。いまやアクティブラーニングは,小学校から大学までの全学校教育段階の教育を,「教えるから学ぶへ(from teaching to learning)」のパラダイム転換へと導くとともに,学校から仕事・社会のトランジションはじめ,生涯にわたり成長を促す,巨大な思想を含み込んだ学習論となっている。

ということで,最近近所のジュンク堂に行ってみたら,初等中等学校の先生方を対象としたアクティブラーニング本が山積みとなっております。
アクティブラーニングの大波は大学の先生にも無縁ではありません。てか,そもそも大学はアクティブラーニングの本場であったはずだな,と本書を手にとって改めて考えさせられました。

「第5章 アクティブラーニングを深める反転授業」が面白かったな。この事例はNHKの何かの番組でちょっと見た記憶があります。

p.107
・効果のある反転授業(知識定着型)は,外化で終わらず,もう一度内化に立ち戻るデザインを採用していた。その結果,反転授業に限らず,内化と外化を小さなサイクルで往還できるデザインは,学生のメタ認知能力の育成にも有効である。

p.105
事例の授業は,教員のこれまでの経験から思い立って最後に〈教える〉を据えたところ,他の実践との大きなデザインの違いとして現れた。
これは知識の内化を目的とする授業において,1)動画を観る(内化)→2)ノートを作成する(外化)→3)わからないことがあれば動画に立ち戻る(内化)→課題を検討する(外化)→5)教えあい・学び合い(外化)→6)講義(内化)という学習プロセスをふむことによって効果が生まれている。

p.105
内化と外化の往還を,動画という手段をもって内化から始める反転授業は,その授業の最後を〈教える〉という内化で締めくくることで効果が上がる。さらにLMSのログを調べると,学生が授業で終わった内容の動画を任意で閲覧していることも明らかになった。授業が終わったあとにさらに外化と内化の往還を止めない環境が整っており,学生がいつでも本棚の本を取るように,講義に立ち戻れるのは,まさに主体的な学びを促していると言える。内化と外化をいかに組み合わせて,学生が対象世界と自己を往還できるようにするかが反転授業のデザインを構築する際のコツであった。でもそれは反転授業に限らない。ALや講義も含む,すべての教授デザインに言えることである。

同じシリーズの2冊目。
PBLといっても,指すものは2つあって,
ひとつは,Problem-based Learning 問題解決を中心とした学習
もうひとつはProject-based Learning プロジェクト学習
それぞれの事例が本書で提示されていて,「ぴーびーえる?それっておいしいの?」な自分にも何となく違いが分かるような構成になっています。
Problem-based Learningの事例は,岐阜大学医学部の,臨床事例をベースとしたグループ学習,
Project-based Learningは,光華女子短大の,科目内で実際に結婚式を計画・実施するプロジェクトを通じた学習でした。

いや~それにしても,アクティブラーニング(のようなもの)をしなきゃという事柄のみが先行して,手段が目的化しちゃわないかというのが気になるところですね。