PROG白書2016 現代社会をタフに生き抜く新しい学力の育成と評価 -2020年大学入試改革を見すえて-

現代社会をタフに生き抜く新しい学力の育成と評価 (PROG白書2016)

現代社会をタフに生き抜く新しい学力の育成と評価 (PROG白書2016)

こちらも,『アクティブラーニングをどう始めるか』→この本で取り上げられていたので読んでみました。lionus.hatenablog.jp
PROG白書2015は大学生版でしたが,lionus.hatenablog.jp
こちらのPROG白書2016は,項目を高校生用にアレンジして実施したものです。やはり大量観察データなので,面白かったです。
印象に残ったポイントなど断片的に:

  • 学力の3要素は独立である

「教科学力」「リテラシー」「コンピテンシー」は相関ほぼなし
→教科学力(英語,数学,国語)がいまいちでも,コンピテンシー,例えば対人基礎力がよかったりする場合もあるので,それぞれの特性に合わせた教育や進路指導の可能性。

p.88
対人基礎力は中・高校時代に身につけたという回答が圧倒的に多い。次に多いのが大学時代だが,統率力を除けば,小学校時代との差は相対的に小さい。

p.89
この調査および前項でみた結果から,大学でのコンピテンシー育成は対自己基礎力や対課題基礎力に集中し,対人基礎力は高校までに育成するのが効果的・効率的と推測される。

※前項でみた結果→高1,高2ではコンピテンシーの伸長はほとんどみられない。
しかし,だからといって大学で対人基礎力育成をしなくてもいいというわけでもないとも。

p.113
対人基礎力は「大学段階では育成しなくてよい」ということではなく,高校段階までに育成される「親密圏の対人基礎力」を社会で求められる「公共圏の対人基礎力」へと拡張していく配慮が求められる。

最後に,高校生の結果だけでなく,某国立大学でPROGテストを2回受験&大学生活に関するアンケートに回答した結果の分析が印象的でした。

pp.109-110
3つの基礎力(対人,対自己,対課題)に共通して,学習態度と学生生活への適応の違いがコンピテンシーの伸長に影響を及ぼしていることがわかる。一方,授業経験や活動時間といった数値にほとんど差がみられないのも,3つの基礎力ともにいえることである。
つまり,単に授業に参加しているだけではダメで,その取り組み方がコンピテンシーの伸長に大きな影響を及ぼすことが判明したわけである。極めて当たり前のことともいえるが,重要なファクトでもある。
アクティブラーニングやPBLは,ジェネリックスキルを効果的に育成する手法である。しかしこれらは,学生が積極的に授業に関与する場の設定方法として,また,その姿勢を引き出す手段として効果的なのである。重要なのは,学生が積極的に授業に関与することであり,そのような学習態度を喚起する仕掛け作りである。有効な仕掛けであれば,必ずしもアクティブラーニングやPBLでなくてもよいのかもしれない。指導者には,アクティブラーニングやPBLを導入して「それでよし」とするのではなく,ジェネリックスキルを育成という目標のために教育手法を改善し続けることが求められる。