心理統計法入門

サイエンス社から献本をいただきました。
当方大学の教授でもないのに何で献本いただいたのかな?と思うのですが,多分某非常勤先の心理学研究法の授業で,サイエンス社のテキストを教科書指定して使っているからかもしれません。
思いもかけずいただいたものですが,現在心理統計の教材を作っている際にとても参考になっています。本当にありがとうございました。
内容は記述統計から,心理学でよく使う各種検定,多変量解析の入り口まで広く浅くですが,非常に短く要点を押さえた記述で,派手さは無いものの,よく考えて作られていると感銘を受けました。
統計学の本は,ユーザーフレンドリーを意識してかマンガ仕立てにしてあったり,動物や女の子などのキャラクターを登場させて講師役との対話形式や物語形式にしたりなどの工夫をしているものがしばしばあります。しかし,本書は,全然そんなことはなく数式もそれなりに出てくるし大学の教科書らしくそっけない作りです。
でも,いいなあと思ったのは,数式が例えば標準偏差がσとかギリシア文字で表記されていたりするようなガチな感じじゃなくて,「データの個数-1」とか,一部言葉で表現されていることで,文系人間には有難いです。
解説の進め方も,この手法は何をどうしているのか,分かりやすく,でもくどくどと迂遠にならない程度で書かれているので,意味も分からずただ計算しているということになりにくいです。こういう書き方は,ご本人が数学的によく把握していないとできないだろうなと個人的な主観ではありますが,感じました。
ただ,広く浅くなので,分散分析での単純主効果の検定など,ちらっとふれているだけで具体的な計算方法までは書かれていないなど,扱い切れていないところもあります。でも,限られたページ数でひととおり扱うためには取捨選択は致し方ないと思いますので,不満には思いません。十分理解できます。
地味だけど素晴らしい教科書だと思います。