視線と指差しと三項関係と表象能力。

授業仕事のために,興味深い動画をいくつか集めたので記事にしておきます。
子どもの言葉の発達の基礎に,「指差し」と「共同注視」と「三項関係の成立」があり,大体10ヶ月~12ヶ月頃に出てくるといわれています。
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この動画では「共感の指差し」は人間だけでチンパンジーにはなく,また言葉で気持ちを伝えるのも人間だけで,チンパンジーはこちらの言うことはそれなりに通じるが,向こうから何かを伝えようと話しかけてこないということもいっています。
この動画でいう「共感の指差し」は「指差し」だけでなく「共同注視」と「三項関係の成立」も込みにした言い方なのかなと思いました。ここでいわれている「共感の指差し」では,きれいな花とか自分が行きたい方向とか,相手と共有したい対象が別にあって,指差しは相手の視線と注意を共有したい対象に向ける手段となっています。
「指差し」が使えるということは,目前の相手の指先ではなく,指先が示す方向(対象)に視線を向け,相手とその対象を共有できることを意味します。
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このような,相手と(相手でもない自分でもない第三の)その対象を共有できる(三項関係の成立)ことが,言葉を覚える基礎となっていると考えられます。
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指さしと共同注視,そして,あなた-わたし-ワンワンの三項関係をベースに、あれは「ワンワン」というものだという意味を共有することができるというわけです。
対象の共有のために指差しと視線を使っている子どもの例(一番上の画像参照:絵本を指差しながら保育者に視線を向けている;伝えたい気持ちのあらわれ)
http://blog.momozono.org/?day=20180921
ところで,上記動画ではチンパンジーは「共感の指差し」は使わないということでしたが,対象の共有のために視線と指差し(?)を使っている?!かもしれないネコちゃんを発見しました。
まず前提となる動画ツイートを。上手にドアを開けてしまっています。


次は,
ネコが操作できないようドアノブを改造→不満そうな声をあげながら,ドアノブの方を見やり,再びスマホを向けている人間の方を見ています。まるで,伝えたいものを”視線”で表現しているかのようです。
さらに,
右前足で不満対象のドアノブを叩く→”指差し”の萌芽?!
人間と常に一緒に生活していると,ネコもヒト並みに”発達”するのでしょうか?!

もうひとつ,言葉の発達の基礎となっている「表象能力」について。
表象とは,目の前にないものや,実際に体を使って行っていた動作を,頭の中でイメージを思い浮かべることで,ピアジェの感覚運動期(0~2歳頃)の終わり頃に成立するといわれています。言葉を使えるということは,実際に目前にないものをイメージし操作できることでもありますので,初語の出現(1歳半頃まで)と2語文の出現(2歳頃)と,表象能力の発達がほぼ同じ時期にみられるというのは,納得です。
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この動画では,目が欠けているチンパンジーの顔の線画に目を描き足せるか,ヒトの子どもとチンパンジー(アイちゃん)で実験するなど,ヒトの子どもとチンパンジーの絵の描き方を比較することで,それぞれの”世界の見え方・とらえ方”を研究しているのだそうです。
動画中には「表象」という言葉は(多分)出てきませんでしたが,ヒトの子どもは表象能力を2歳頃からめきめきと発達させるのに対し,チンパンジーにはそれはないようだ,という違いを示しているように拝見しました。