ジェンダー心理学(朝倉心理学講座14)

ジェンダー心理学 (朝倉心理学講座)

ジェンダー心理学 (朝倉心理学講座)

女性も男性も生きててそれぞれしんどいなあと思う世の中ですが,そのしんどいなあ,は社会文化的な要因によるところが大きく,そのからくりを暴き出していくことがジェンダー心理学の役割なのかもしれない,と思いました。
大体どの執筆者も,現状の整理と先行研究の紹介,という構成で難しいな~というところはないのですが,あれこれうーむと考えさせられました。
例えば,「3. 保育とジェンダー」の章では,保育者の無自覚な言動が子どもに対ししばしば不適切なジェンダー・メッセージを発してしまうことが書かれていますが,そもそも保育士自体,性役割観が保守的な傾向が強いのではないか?と指摘しています。
引用されていた知見として,保育系学科の学生は,性役割観が他の学科学生に比べて保守的で,家事と育児の両立を望むものは1%に過ぎない。
→これは保育系・幼児教育系のところに非常勤で長年行っているので,実感としてあるあると思います。保守的な性役割観のひとつに,育児は女性の役割,ということがあって,その役割に魅力を感じる≒保守的な性役割観に親和的な群,ということなのではないかと。

p.46
「共働き家庭の支援という職業上の役割と自己のジェンダー観とのギャップが存在するのである。現役の保育士もこのギャップを克服しているわけではない(乙黒、2003)。

なんてこったい。皮肉なことだね。
まあ,保育士の待遇の悪さとあわせて考える必要がありますが・・・

p.46
宮沢(2003)によれば、支援者である自分自身が「ジェンダーという鎖」に縛られていたことに気づき、スタッフや母親たちと学習することによって、「さまざまな子育ての悩みの多くがジェンダーに起因している」という確信に至ったという。

でも分かるような気がするな~
というのが,保育園とか幼稚園から,靴入れ?等各種袋を名前入りオリジナルで一通り手作りで用意してくださいとか,手縫いのぞうきんを持たせてくださいとか,保護者に対して色々な手仕事要求がなされると聞きます。
ある季節に手芸材料店に行くと,入園準備コーナーなるものがあって,(子どもが喜びそうな)アンパンマン柄のキルト布地などがずらっと並んでいたりします。また,園から要求された仕様に合わせて”手作り”を代行する有料サービスがある旨紹介されていたりもします。
うーん。
私はちまちまモノを作るのが好きな方なので,その時になれば結構楽しんで作れそうな気がしますが,そもそもお裁縫が好きでもなく得意でもない人もいるわけだし,仮に得意・好きでも働いていたらそんな時間(気持ち)の余裕なんてありません!
これ何て罰ゲームですか!という感じです。
こういうことを保護者に対して要求するバックグラウンドとして,保育者(園側)のもつ(悪意のない)保守的な性役割観があるのではないかと思います。