情報参謀

情報参謀 (講談社現代新書)

情報参謀 (講談社現代新書)

SNSや掲示板などネットの”クチコミ”と,24時間録画したテレビ報道内容の分析から,自民党の”政権奪還”のための情報分析=情報参謀として働いた記録です。
臨場感あふれる語り口でスルスルと読めてしまいます。
所謂,流行の”ビックデータ”の分析なのですが,ツールにデータを放り込んで終わり,ではなくて,テレビ報道内容の分析などはまず人間がテキスト起こしして,さらに人の手でフィルターをかけるという非常に泥臭い作業をしていたことがうかがえ,興味深かったです。そうなのよね。データを”料理”しておいしく食べるためには,実は下ごしらえが肝心なのよね,とうなづきながら読みました。
震災後のメディアの状況についてうまくまとめておられるなと思った箇所がありましたので,少々長いですが引用しておきます。

pp.113-114
ネット映像経路,あるいはツイッターのようなソーシャルメディアなど,情報を媒介とする政治と国民とのチャネルが増えた。一番活性化したのは情報を受け止める側同士のヨコのコミュニケーションだ。東日本大震災ツイッターフェイスブックの存在が注目され,一気に人気が広がり,新しい通信手段として広く認知された。それはまさに,将来有権者になるであろう人びとも含め,有権者同士がフラットに意見を交わせるようになっているということを意味してもいた。
同時にそれは,メディアの構造,情報の構造があの震災以前と以後とでは決定的に変わってしまったということでもある。情報は国民のあいだで広まり,共有される。それゆえに,永田町は自らの論理を押し通すだけではとても国民の信を得られない。「そんなことやってる場合じゃないんじゃないの?」という意見がじつは一般的な世論であるという認識を持たねば,その先の道を誤ることになるだろう。
震災後,テレビ報道が災害の影響一色になるなかで,こちらがいくら押し出しても露出が難しいという状況が続き,問責や不信任を使うことがかえって状況を悪化させるというなかで,常識が変わっていった。世論をしっかりとつかむために「情報伝播の仕組み」や,「情報のモニタリングの仕組み」をよりいっそう活用していかなければならなくなった。