マンション格差

マンション格差 (講談社現代新書)

マンション格差 (講談社現代新書)

元業界の”中の人”で現在は「住宅ジャーナリスト」である著者が、マンションはこう計画されてこう作られて、こう売られているんですよ、と分解して示してくれる、とても分かりやすい本です。
ただし、本書で説かれているような、”負け組”にならない、価値の下がらないマンションを購入しようとしたら、時機(購入時期≒運ともいえる)と資金に恵まれている必要があるでしょうね。30年ローンを組んでボーナスも返済にまわしてぎりぎり購入する一般庶民にはなかなか難しいことだと思いました。
本文の最後に書かれている記述は重いですね。

p.163
多くの人がマンションを購入すると深い満足感や達成感を得る。それこそが、新築であれ中古であれ、マンションを購入することの最大のメリットではなかろうか。
一方、所有するということは資産を形成できる反面、リスクを背負うことでもある。所有することで格差のリスクにさらされる。欠陥建築のリスクもある。管理のトラブルに巻き込まれるリスクもある。不愉快な隣人を持ってしまうかもしれない。マンションを購入する場合は、こういったリスクを背負うことであることも、十分に理解しておくべきであろう。

ヤドカリが自分の背負った貝の家が重くて身動きがとれずついには押し潰れてしまうイメージが浮かんでしまいました。
こればっかりは個人の考え生き方に依るものですのでまさに「神学論争」ですが。
なお、本書の内容は東京主体で、関西や他地方への視点はほとんどありません(書かれている内容は応用可能ではありますが)。

あ、そうそう。別の著者による『2020年マンション大崩壊』も併せて読むといいかもしれません。
こちらの方が話が緻密だったような印象が残っています。