- 作者: 宮本常一,香月洋一郎
- 出版社/メーカー: 未来社
- 発売日: 2011/02/25
- メディア: 単行本
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大雑把というか,猥雑というか,でもゆるいことがやさしい面もあったかもしれないね。
- メシモライ
p.8
メシモライというのは,船の中で大きくしてもらうのである。夫婦で船に乗っている場合には自分の子もいっしょにのることがあるが,男ばかりで乗っている場合には自分の子をのせることはない。しかし他人の子をもらって船にのせることがあった。たいした理由はなかったが,「気の毒だ」という程度のことであったらしい。何人かの仲間で漁船にのっているような場合は,メシモライをのせていることがあった。少し大きくなればカシキ(炊事)をさせるようになるのであるが,それまではただ船の中であそばせておいた。あるいは,船の中に子供がいることで気持がほぐれてきたのかもわからない。
「船の中に子供がいることで気持がほぐれてきたのかもわからない」>ペットかよ!(笑)
- 昭和8年有村さんという帆船船員から聞いた話(pp.121-122)
チョロ*1に乗ってきた若い遊女と一夜のちぎり→女にほれてしまってそのまま船から陸にあがってその女の家に転がり込んだ→船員が陸に上がっても仕事がなくやることがない→結局女にやしなってもらう→愛する女に身を売らせるのはたまらない→かとってどうすることもできない。煩悶の末,だまって出ていき外国航路の船に乗った。
それから20年たって,船がまたその港に寄港した際に,その女のことを聞きにいった→この港の裕福な家に嫁いで,今は幸福に暮らしているそう。
- チョロ船の遊女の話(pp.124-125)
土地の女,付近の島の女たちもここにかせぎに来た。そして嫁入支度をととのえてかえっていくものも多かった。そんな女を誰が嫁にするのだろうと,他の地では考えられるだろうが,内海の島々の男の中にはそんな女の方がよいというものも多くて,嫁入口には困らなかったばかりでなく,そういう女の方が所帯もちはよかったともいわれる。すべての女がかならずしもそうではなかっただろうし,悲惨な運命にもてあそばれたものも多かったはずだが,若い無垢な女たちを引きつけるほどの魅力をこの港はもっていた。
性モラルというのは地域や時代によって全く異なってくることの好例。
*1:港に船が入ってきたら,チョロ船と呼ばれた小さい船に乗って遊女が寄ってくる。