占星術夜話

占星術夜話

占星術夜話

鏡リュウジ先生が,雑誌「ムー」に連載しておられた記事をまとめた本です。
なので,すでに時期的にずれてる内容もあるのですが,年季の入った占星オタクらしい問わず語りな本で楽しかったです。
占星関連でタロットやユング心理学に関する記事もあります。その中で,タロットに関する記述は笑いつつ,なるほど~と思いました。
タロットの「力」というカードは,女性がライオンの口を優しくこじ開けて(?)いる図なのですが,これは聖書に出てくる英雄怪力サムソンのライオン引き裂き退治の絵画が元ネタ?→後に(聖書のサムソンの話を知らない)絵師がサムソンを長髪から女性と誤解してタロット図版を描いた,という説を書かれていました。
何だかな~お笑いだな~という感じですが,でもそういう話からこういうことも考えられるよね,ということはちょっと感銘を受けました。

p.134
こうした「誤解」や「誤読」が一人歩きして,タロットの図像のなかに入り込んでいったことは,おそらく何度かあっただろう。しかし,だからといってタロットの解釈が無価値になるかといえばそうではない,と僕は考える。
「誤読」が起こるとき,そこには心理学的な投影が必ず入り込む。いうなれば,人はそこに己の心の深層を「読み込む」。こうした創造的な誤読が積み重なって集合的な無意識の象徴表現としてのタロットが育まれたと考えてはどうだろう。

p.134
このように考えてくると,タロットの歴史には「誤解」があったからこそ,そのなかに人々のイマジネーションが投影され,心理学的に強力なツールとして僕たちの心を揺さぶるものへと変容していった,と考えてもいいのである。
その意味で,タロットの真の起源はエジプトでもカバラでもなく,人間の魂の深層だと考えることができるのである。