- 作者: 石原慎太郎
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2018/01/24
- メディア: 文庫
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何の予備知識なく読み始めたので、これ何?と当初面喰いましたが、一人称小説なんですね。
- 「長い後書き」より:
pp.106-108
彼が証した最も大切な基本的なことは、政治の主体者が保有する権限なるものの正当な行使がいかに重要かつ効果的かということだった。彼は政治家として保有した権限を百パーセント活用して世の中を切り開いた。
特に通産大臣として彼が行った種々の日米交渉が証すものは、彼はよい意味でのナショナリスト、つまり愛国者だったということだ。彼は雪に埋もれる裏日本の復権を目指したように、故郷への愛着と同じようにこの国にも愛着していたということだ。
アメリカのメジャーに依らぬ資源外交の展開もその典型だと思う。
そしてそれ故にアメリカの逆鱗に触れ、アメリカは策を講じたロッキード事件によって彼を葬ったのだった。私は国会議員の中で唯一人外国人記者クラブのメンバーだったが、あの事件の頃、今ではほとんど姿を消してしまった知己の、古参のアメリカ人記者が、アメリカの刑法では許される免責証言なるものがこの日本でも適用され、それへの反対尋問が許されずに終わった裁判の実態に彼等のすべてが驚き、この国の司法の在り方に疑義を示していたのを覚えている。そして当時の私もまた彼に対するアメリカの策略に洗脳された一人だったことを痛感している。
彼のような天才が政治家として復権し、未だに生きていたならと思うことが多々ある。
先日読んだ『同心円・・・』ではアメリカの”虎の尾”を踏んで陥れられた論は否定されていましたが、石原慎太郎氏はこの論に基づいて、惜しい政治家を早くに失ってしまったと惜別しています。