しかし,もともと「気象遭難」というしっかりした一本の幹をもっておられるゆえか,なかなか読み応えのある内容でした。災害後1年でこれだけの内容をまとめて出版できるなんて凄い。
本書のポイントは
- なぜ人は逃げ遅れるのか
- 適切な避難行動のためには何が必要か
- 被災地のよりよい復興のヒント
だと拝見しました。
自分は特に1つ目と2つ目に興味があり,あれこれの示唆を得ることができました。
まず1つ目の「なぜ人は逃げ遅れるのか」については,豪雨災害の被災者へのインタビュー内容を,災害心理学者広瀬弘忠先生のコメントを随所に取り上げながら「正常性バイアス」と「同調性バイアス」をベースに,きっちりとまとめておられます。
2つ目については「専門家に取材を重ねるなかで,もっとも可能性を感じたのは,防災科学技術研究所の三隅良平さんの話」として,以下4つの指針を紹介しています。
pp.128-129
【1】自分が暮らす地域の過去の災害歴や地理的な特徴を知る
【2】避難行動を起こす自分なりのルール,避難の方法をあらかじめ決めておく
【3】大雨や台風のときには,自分から情報を取りに行く
【4】あらかじめ決めたルール・方法に基づき,避難行動を起こす
p.131
私が三隅さんの話に共感し,可能性を感じられたのは,現場での危機感や切迫感といった正常性バイアスに影響されやすい曖昧な感情や感覚ではなく,平時の冷静な頭で考えた自分なりのルールを,避難行動を起こすかどうかの基準としているからだ。
なるほどなるほど。
なお,上記指針【3】について,ただTVの気象情報などを見るというより,ネットで見れる豪雨レーダーなど,一次情報を積極的に取りに行くということのようです。
自分もちゃんと考えて何かしておかねばと思わせられます。