NHK「100分de名著」ブックス マキャベリ 君主論/マキァヴェッリ:『君主論』をよむ

年明けにこの記事を読んで触発され、
anond.hatelabo.jp
NHK「100分de名著」で紹介された”名著”を解説した本や入門本を順番に読んでみようと思い立ちました。
上記記事主は、NHK「100分de名著」の番組テキストのバックナンバーを読んだみたいですが、近辺の図書館には入っていないようなので、自分の近辺で借り出せるものにするつもりです。
その一つ目として、マキャベリ君主論

NHK「100分de名著」ブックス マキャベリ 君主論

NHK「100分de名著」ブックス マキャベリ 君主論

  • 作者:武田 好
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2012/08/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
番組テキストではなく、番組の内容をまとめた「100分de名著」ブックスのシリーズです。
君主論』のあらましと、それが書かれた時代的背景や状況を分かりやすく解説されています。
君主論』とは、もう一度政治の仕事がしたいよとメディチ家に向けて書いた「就職論文」だったとは。
マキァヴェッリ: 『君主論』をよむ (岩波新書)

マキァヴェッリ: 『君主論』をよむ (岩波新書)

他の著者による別角度の話も1冊は読んでみようと、選びました。出版年が新しくて、岩波新書という点で選びました。
こちらは新書だけど、少々難しかったです。でも『君主論』が書かれたルネサンス期とはどういうものか、またこの著者がいっている『君主論』の特異性が参考になりました。

pp.245-246
 マキァヴェッリは、神が善人に報いてくれるという信仰や、運が自らに味方しているという根拠なき想定を打ち砕き、祈りや無為による統治を批判している。欺瞞や裏切りなどの悪徳は、政治的失敗をもたらすかもしれない。とはいえ、神の意志ゆえにそうなるわけではない。そこには世俗的理由がある。裏返せば、暴力や悪徳の行使ゆえに神が罰を与え、現世で不幸になるわけでもない。ローマの成功がローマ人の徳に対する神の報いであるという伝統的な理解からすれば、ルッカのプトレマエウスが論じたように、悪しき君主には必ず神による罰が下る。しかし、マキァヴェッリが神を信じていたとしても、その神は、現世の事柄にそのように関与することはないように見える。だとすれば、彼にとっての知的な課題は、いかなる政治的行為がいかなる帰結をもたらすかという問題に関する世俗的説明であるお。マキァヴェッリは、粘り強くかつ大胆いこの問題の解明に取り組んだ人物である。
 すでに触れたように、中世と比較する限り、ルネサンス期には人間の自由や能力が力強く肯定された。この命題は、たしかに聞こえは良いが、そのことは、信仰の欠如に伴う不安や知的混沌をその代償としている。それゆえ、単純に中世よりも近代が良いというわけでもない。不安や混沌を抑えるためには大いなる努力を要するし、すでに述べたように、人間が神ではないゆえにいくら努力を重ねたとしても、その不安は、完全には解消されえない。この状態は、憂鬱な状態であろう。
 しかし、マキァヴェッリは、対象を理解しようとする意欲を捨て去ることはできなかった。彼は、親友ヴェットーリとの書簡から明らかなように、政治を語らざるをえなかったのである。マキァヴェッリの理論的な試みは、キリスト教的理解への挑戦であり、さらには、その理解が確実性を失い始めたゆえの知的混沌への対応と見ることができる。