人はなぜ逃げおくれるのか

キャッチーなタイトルです。
再読です。以前読んだときの記事。
lionus-old.hatenablog.jp

タイトル通り避難行動の心理学的解説がなされているほか,災害時・災害後の被災者や被災社会の特徴について概説されています。

今回再読して,以前はあまり印象に残っていなかったけれど,今はへぇと思う内容。

p.209
大災害は社会的な変化を加速するというのが,プリンスの結論であった。これを別の言いかたで表現すると,災害社会学者のユージン・ハースたちの述べているように,災害のもたらす社会的な影響の本質は社会変化の先取りであり,「急速に成長しつつあるコミュニティは,被災しても急速に復興するが,変化せず停滞しているか,下り坂にあるコミュニティは,被災後にきわめてゆっくりと復旧するか,急激に衰えていく」ということになる。

p.211
 大災害は,それまでの社会システムの欠陥をクローズアップして見せることで,いわば変動期型の社会をつくり出す。別の言いかたをすれば,歴史の歯車を一回転前進させることで,移行期の社会を醸成すると言ってもよいだろう。その際のキーワードが社会システムの効率化である。この現象は,具体的には合理化というかたちで現われる。

本書では,有珠山噴火で観光業打撃をきっかけに中小旅館が大手資本に吸収合併された例や,阪神・淡路大震災後の「神戸ブランド」凋落の例があげられています。

p.212
 被災した社会システムは,災害後の事態に適応するために,機能面での合理化・効率化を進める。その過程で,古くて非効率的な部分は切り捨てられるか,統合して再生させられる。思い切ったスクラップ・アンド・ビルドは,平常時にはさまざまな抵抗にあって徹底を欠くが,緊急の事態のもとでは,断行が容易になる。このような思い切った動きの結果,社会システムの改変が起こるのである。

今回の新型コロナウイルス・・・学校の休校とかリモートワークとか,学校や職場に一斉に集まらないといけないという呪縛から解放される機会になるのか?!