臨床宗教師―死の伴走者

臨床宗教師

臨床宗教師

  • 作者:藤山みどり
  • 発売日: 2020/01/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
「臨床宗教師」について知ったきっかけなど,思い出せませんが,
2014年11月のNHKの番組だったのかもしれません。
www.nhk.or.jp

本書は終末期の患者や家族,あるいは遺族を医療者とは違う立場から支え,ケアをする「臨床宗教師」について,東日本大震災をきっかけとしたひとりの僧侶の自発的活動から東北大学大学院に養成講座が立ち上がっていく経緯や,臨床宗教師の活動の実際についてまとめられている本です。
とりあえずこの一冊を読めば「臨床宗教師」ってどんなもの?について大体分かるようになっています。

臨床心理士」と「公認心理師」をもっている自分としては(どちらも使っていないペーパーですが),従来からの”心理カウンセラー”等と,臨床宗教師はどこが違うのか?どのような棲み分けになるのだろうか?という気持ちで読んでいました。
当然,著者もそのあたりは意識しているようで,心理の専門職とはここが違う!といったことをちょこちょこ書かれています。
まあいくつか書かれていたことの中には,?といささか疑問に思うこともあったのですが,絶対にこれは違うな!納得!というのは

p.312
 臨床宗教師は,公認心理師の登場によって締め出されるのではないかと懸念する人もいるかもしれない。だが,臨床宗教師は,布教伝道はしないものの宗教者であり,ケア対象者の希望によっては宗教的ケアも行う点で公認心理士とは全く別な存在である。この点では,一般的な心理の専門職とは全く競合しないといえる。

そうなんだよな。
終末期患者に「死後の世界はあるのか」「死後の世界の幸福」とか,「霊」はいるのかとか問われたら,うーん・・・ですし(もちろんしっかり受け止めてやりとりしていくしかないでしょうが),いやそもそも,心理職に聞かないだろうしなあ・・・
実際,本書には東日本大震災後に,被災地で「幽霊」が出るとかいう相談に,臨床宗教師たちがいかに対応したかの事例も挙げられています。

津波に流されて亡くなった友人が幽霊として出てくる,という女性の相談について)
p.27
彼女の紡いだ物語を「傾聴」を通して整理し,そしてそのすべてを受けとめ,その後,宗教的な儀式である読経と,宗教的資源である地蔵と数珠を渡すことで落ち着いた事例だという。これらは,傾聴にとどまることも多い心理カウンセラーとは違い,宗教者であることを活かした対応である。

そうなんだよなあ。公認心理師が「読経」しても全然有り難くないよねえ・・・
まあ心理屋は心理屋としてのやり方があるとしか言えないなあ。