本田宗一郎―やってみもせんで、何がわかる

「ミネルヴァ日本評伝選」のひとつです。
以前、同シリーズで、ソニー創業者の井深大の評伝を読みましたが、
lionus.hatenablog.jp
ホンダ創業者の本田宗一郎のもあると知り、

p.14
宗一郎は三回の起業をいずれも成功させたが、宗一郎の戦後の成功が、ホンダの成功である。その戦後の宗一郎の経営者人生にはいくつかの句読点があるが、それらがすべて以下に説明するように戦後の日本経済の句読点と不思議に一致している。その意味で宗一郎は、戦後日本経済の復興と高度成長を象徴する経営者なのである。

「戦後日本経済の復興と高度成長を象徴する経営者」という点で、ソニーとホンダは私の頭の中では同じようなカテゴリに入っているので、じゃあこちらも読もうかということです。
本書は宗一郎本人やホンダに特に関係が深いというわけではないが、出版社から依頼を受けたベテラン経営学者の先生によるもので、創業者・経営者としての面に焦点をあてています。
最後、「お礼の会」(社葬は故人の遺志でしなかった)のくだりはジーンときました。なかなかいい読後感でした。
「思想の人、理念の人」

p.265
「私の哲学は技術そのものより、思想が大切だというところにある。思想を具体化するための手段として技術があり、また、よき技術のないところからは、よき思想も生まれえない。人間の幸福を技術によって具体化するという技術者の使命が私の哲学であり、誇りである」(『私の手』54頁)

技術は手段であって、目的化してはならない。