入門 人間の安全保障 増補版―恐怖と欠乏からの自由を求めて

図書館の新着コーナーで背表紙のタイトルを見て、何だか知らんけれどもこれは読むべきだと直感して手に取りました。
(自分にとっての)その直感は正しかったです。
国際社会とか国連とか、地域武力紛争とか、自分は非常に疎い分野ですが、本書はそのような知識ゼロの人も読めるように、
「第1章 国際社会とは何か――成り立ちと現況」
「第2章 紛争違法化の歴史と国際人道法」
という2つの章を割いて基礎的な知識を提示した上で、本題である
「第3章 「人間の安全保障」概念の形成と発展」
に入るという構成になっています。どうも大学の授業での経験をベースにされている本のようで、それがかなり反映されているのではと思いました。

さて本題の「人間の安全保障」とは、本書で示されている定義によると

p.83
 「人間の安全保障」(human security)とは、「人びと一人ひとりに焦点を当て、その安全を最優先するとともに、人びと一人ひとりに焦点を当て、その安全を最優先するとともに、人びと自らが安全と発展を推進することを重視する考え方」(緒方貞子)です。「世界社会開発サミット」(1995年3月開催)に向けて、1993年から94年にかけて国連開発計画(UNDP)によって打ち出され

たもので、さらに

p.88
「人間の安全保障」の主要構成要素として、「恐怖からの自由(freedom from fear)」と「欠乏からの自由(freedom from want)」の二つを挙げました。

ということです。「基本的人権」の考え方と共通しているところがあるな~と読みながら感じましたが、

p.109
「人間の安全保障」は人権保障とイコールではありません。しかし、両者は密接に補完しつつ関わり合っているのです。この関係を象徴的に示す概念として「尊厳(dignity)」があります。
 日本では1998年12月の小渕総理演説において「人間の生存、生活、尊厳を脅かすあらゆる種類の脅威を包括的に捉え」る概念として「人間の安全保障」を提示するなど当初から意識され、先に引用した国連文書にも明記された概念です。本書でも恐怖と欠乏からの自由に加え、「人間の安全保障」が実現しようとする三つめの自由・価値として、「尊厳をもって生きる自由」を位置付けていきます。

ということで、さらに一歩踏み込んだというかひと味違うところがあるのかなと思いました。
本書では「人間の安全保障」を軸に、それに関連するいろいろな問題をさらに解説しています。
災害に興味ある自分には、心理学とか社会学とはまた別な角度から災害救援や防災(災害被害の予防)を考える視点を教えられた本でした。