ネオウイルス学

pp.4-5
 ウイルス学の歴史は19世紀の末に始まりましたが、これまでは生物に病気をもたらす「病原体」としての側面に研究が偏っていました。そもそもウイルスという名称自体、「毒」を意味するラテン語のvirusに由来しています。
 しかし、私たちウイルス研究者の間では、ウイルスが寄生する「宿主」に必ずしも悪い影響だけを与える存在ではないことが知られてきました。病原体としてインフルエンザウイルスやエボラウイルスを長年研究してきた私自身、以前から「病気を起こさないウイルス」に興味を抱いていた一人です。
 そこで私たちは、ウイルスの機能メカニズムをより深く追求し、生物の生命活動や生態系におよぼす影響、自然界におけるウイルスの存在意義を解明する、新しいプロジェクトを2016年に立ち上げました。それが「ネオウイルス学」です。

ウイルスは病原体であり、ヒトをはじめとする動物や植物に害をなすそれらのものを研究するのがウイルス研究(ウイルス学)だと思っていましたが、ウイルスは必ずしも宿主に害をなすものばかりではないということを、本書を読んで知りました。
ではウイルスは一体何をしているのか、そういったことを調べることで、”役に立つ”ウイルスを見つけたり、生命活動の理解を深めたり、生命の起源の謎を追究する方向性があるんですね。
ネオウイルス学、こんなんあるよ!面白いよ!と各研究者が書いている本です。