廃墟からの歌声 原爆投下後の傷害調査にたずさわった遺伝学者の回想

原爆投下の人体への影響を調査するために、アメリカが設置した調査研究施設であるABCCに、1949年に遺伝学者として赴任し、以来何度かの帰米・来日をはさみながら、ABCCが放射線影響研究所へと改組された後も長年運営にたずさわってこられたシャル博士の回想録です。
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戦後間もなくの日本が、朝鮮戦争特需をきっかけにどんどん復興し、そして繁栄していく、その時々の回想と、本書が書かれた1990年あたりのご本人の日本に対する感慨や、日本社会や文化に対する見解が書かれていて、なかなか面白い内容でした。
アメリカ人から見た日本人の”生態”が淡々と詳細に記述されているところ、例えばABCC(広島)がある比治山での毎年の花見どんちゃん騒ぎの描写などは、ただありのまま詳しく詳しく記されているために、ある種のおかしみまで漂う感じで、何ともいえません。真面目な方なのだと思いますね・・・

p.314
 いくつもの集団が特別狙撃対のように公園にやって来て、それぞれがゴザ、弁当、そしてたくさんの日本酒やビールなどを運び、魅力的な場所、できればたくさんの桜が咲いている枝の下に、場所をとってゴザを敷きます。

(その後、数ページにわたって日本人の花見どんちゃん騒ぎの描写が続く)

p.316
このようなことが起こっている間、ABCCにいる私たちは歯を食いしばって、次の日の宴会のために心の準備をするのでした。そうしているうちに、桜前線がさらに北へ進んで行き、この騒ぎもまもなく終わり、静けさがもどってくると、私たち自身を慰めるのです。

その節は、ほんま騒がしくてすんませんでした(汗)