質的調査の方法〔第2版〕: 都市・文化・メディアの感じ方

質的調査の方法〔第2版〕: 都市・文化・メディアの感じ方

質的調査の方法〔第2版〕: 都市・文化・メディアの感じ方

昔,「震災体験談」的なものをテキストマイニングっぽいことをしたことがあるのですが,きちんと「質的調査」をしたことがなかったので,読んでみました。
社会学ベースの多数の執筆者が自分の経験をもとに,こんな風に取り組んでみましたと語ってくれている本です。
アニメでもファッション雑誌でも何でも質的調査の分析対象になるのだ,さあキミもやってみよう,と後進を励ますような本ですね。
細々したテクニックや,データを収集した後の整理・分析方法などは示されていませんでしたが,そもそも質的調査の対象は何でもありなので,標準的な手順を示せないので仕方がないでしょうね。

質的調査の方法に関連して「発想法」技法の数々→川喜田二郎『発想法』(1967)『続発想法』(1970),加藤秀俊『整理学』(1963)『取材学』(1975),梅棹忠夫『知的生産の技術』(1969)が挙げられていましたが,特に梅棹について,所謂最近の「情報リテラシー」的な授業では,梅棹のいう「検索・処理」と「生産・展開」が分断されて有機的につながっていないのではないか,一方,「整理」は前者と後者をつなぎ一連のものとするのに必要な方法・技術ではないか,「整理」は情報の生産のカギではないか,といったことが書かれていたことが印象に残りました。

その他,印象に残ったのは,「違和感を「問い」にする」

pp.145-146
個人的な感情や違和感は,その社会に接触して生じる大切な実感である。もしあなたが,何かに関して割り切れない気持ちをいだいているとしたら,自分がどうしてそう感じるのかその背景についても考えてみよう。そこで生まれる「問い」を言葉にしてみることが,社会から学ぶ始まりとなる。

けれども自分が引っかかっていることをただ言語化しただけでは全然まだ始まってはいなくて,
「「調査っぽい」ことから調査へ」

p.25
あなたの調べたことから導かれる発見や主張が,その場にいない他の誰かにとっても十分に納得的であるためにはどうあるべきか。

が肝心である。
こうやって赤の他人への納得≒説得する技を身につけることは大学を卒業しても人生で役に立つ経験なのではないでしょうか。