希望の裁判所 ― 私たちはこう考える

「開かれた司法の推進と司法機能の充実強化に寄与することを目的とする、現職の裁判官の団体」日本裁判官ネットワーク編著の本です。
元裁判官で現大学教授によって書かれた,『絶望の裁判所』を念頭に置いたタイトルなのでしょうね。
司法制度改革,いろいろ言われているけれども,裁判は昭和の時代よりもこういうところがよくなっていると思うよ!ということを,現職および元裁判官(現在弁護士や大学教授),弁護士の先生方が寄稿されておられます。
門外漢には本書の内容の客観的評価はできませんが,「絶望」とこの「希望」の中間地帯に「ほんとう」の裁判所が幅をもって存在しているのだろうと思います。
つまりはどちらも読んでおく必要があると思います。
あちこちメモを取りながら読みましたが,まあ日本人てそうだよねえと思ったところ,引用しておきます。
第3部 希望の弁護士>弁護士の輝く時代へ 久保井一匡>6 裁判所に対して感じていること>(1)上からの改革~よくなってきた裁判所

p.192
このところの司法制度改革で民事裁判にしても行政裁判,刑事裁判にしても,裁判所は以前より非常によくなっていると私は考えています。日本の社会は江戸時代が終わって明治維新第二次世界大戦後のの戦後の改革,常に上からの改革,この平成の第三の改革にしても,常に上からの改革でした。
戦後の日本国憲法の制定にしても当時の日本の社会のレベルからすると憲法のレベルには達していなかった。明治維新のときも近代国家の建設といったところで,とても民衆はついていけなかったのであって,上からの力で無理やり箱を作ってその箱に国民がついていった。ですから,司法改革についても,現実のニーズに合わせて法曹人口を決めていったら,進歩というものがないのであって,まず1500人,2000人という箱を作って,その箱に合ったかたちで何年かあとで事件がついてくるというべきです。佐藤幸治先生に対して「現場のニーズを考えずに,査定せずに,大きな箱を作りすぎた」との批判がありますが,その批判は間違っています。上からの改革がなかったら日本の社会は変化しないからです。最高裁判所は範を示したでしょう?最近は伸び伸びとした判決を書いているじゃありませんか。滝井繁男さんは世論に乗って頑張ったわけです。最高裁が頑張ったら下級審も安心して頑張れる。

いい箱を作れれば成功するってことなんだろうね。
あるあるあるある,って思うけれども,箱を作る人の見識に依存してしまうのが困るよね。

今まで使ってきたPCたち。

いつか何とかせねばと思いつつ,使わなくなったPCが家にたまっていたのを,ついにリサイクル業者に処理依頼することにしました。
これを機に,今まで使ってきたPCのことを書きとめておこうと思います。

  • 1台目:NEC PC-9801VX

参考:http://adachi-giken.com/computer/pc98/pc98-outline.html
1986年6月頃~1992年3月まで使用。
あんまり高度なことはしてなくて,ワープロ(一太郎),ゲーム,BASICで少々遊んでいた程度。
子どもだったので,電話回線を使ってパソコン通信などするまでには至りませんでした。もしやっていたら,世界が変わっただろうな~
lionusが大学入学で関西に行く際に富士通OASYSワープロは持っていきましたが,これは実家に残していきました。主に母親?がゲームに使っていたようですが,ゲームが入っているメディア=5インチFDが逝ってしまいゲームができなくなったのを機に,いつの間にか処分されていました・・・

参考:http://dia.way-nifty.com/memo/2005/09/post-3734.html
1996年~1998年まで使用。
Pentium120MHz,メモリ16MB→買った当時ノートPCでメモリを16MBも載せているなんて!と思い,頑張って買いました。
このPCを手に入れて,ニフティサーブに入会してパソコン通信をちょこっとやりました。
改めて手にすると,重っ!3~4kgはありそうです。これをそれ自体結構重いPCバッグに入れて大学まで山登りしてたんだなあ・・・
特徴的なのが,CDROMドライブとFDドライブは本体に両方とも内蔵されているのではなく,それぞれ入れ替え可能なカートリッジ的な形になっている,つまりFDドライブをセットしたらCDROMドライブは取り出しておかねばならず同時には使えない,という方式だったのです。
そのような何だかややこしい作りのためか虚弱体質で,HDDが徐々におかしくなりついには起動しなくなったのですが,ファイルのバックアップを取っていなかったので,慌ててDOSコマンドで可能な限りファイルをフロッピーにサルベージしたことを思い出しました。
今回ぱかっと開いてみたら,液晶画面と本体をつなぐヒンジ部分のプラスチックがバキッ,粉々になってしまいびっくりしました。20年の経年劣化ってやつでしょうか。

参考:https://www.inversenet.co.jp/pclist/product/SHARP/MN%252D340%252DX15.html
1998年~2001年くらい?
MMXPentium150MHz,メモリ32MB
テレホでインターネットしてた頃ですね。
これも重いです。前代メビウスと同じく3~4kgありそうです。
今回電源入れてみたら,Windows95がちゃんと立ち上がったのにはびっくりしました。
前代のメビウスも同じくWindows95でしたが,このメビウス二代目は丈夫でさくさく動く働き者で非常に使いやすかった記憶があります。
メビウスノートが製品としてこなれてきた頃だったのかもしれません。こちらはぱかっと開いてもバキッとなることはありませんでしたが,さすがに液晶の映りはぼんやり見えにくくなっていました。

参考:http://ascii.jp/elem/000/000/313/313548/
1999年?~2003年?
MMXPentium266MHz,メモリ32MB?もしかすると64MBに増設してたかも。
3台目メビウスと時期かぶっていますが,多分,重いけれども大きさがコンパクトなメビウスを大学に持っていく用に,平たくて表面積が大きい4台目ダイナブックを家用にしてたのかも。
ダイナブックWindows98USBメモリを使い始めました。FDと比べて容量が大きくて(8MBとか16MBだけど),学生の提出物を楽々回収できるようになって有難かったなあ~
2ちゃんで実況をよくやってたのはこの頃です。
今回電源を入れてみましたが,HDDを認識せず立ち上がりませんでした。

2003年2月?~2008年
PentiumIII1GHz,256MB
型番で検索しても,1800は沢山出てくるのですが,1801はさっぱりで,どうもWindowsXP ProfessionalでワイヤレスLAN内蔵を当時売りにしてた限定生産モデルらしかったです。
参考:http://dynabook.com/pc/catalog/limited/rps180ap/index_j.htm
確かに,そのあたり比較熟慮して買った気がします。
そしてこの5台目ダイナブックを購入した後に自宅内を無線LAN化したはずです。
今回まだちゃんと生きていて立ち上がってくれました。

参考:http://ascii.jp/elem/000/000/014/14631/
2003年?~2009年くらいまで
PentiumM900MHz,256MB
この頃は自分比であちこちの学会に行きまくっていたので,モバイルPCが欲しくなり,大学生協で法人向けモデルが売っているのを衝動買いしました。
だから5台目ダイナブックと時期がかぶっています。
コンパクト(B5サイズ)で軽いのに光学ドライブがついていてSDカードも使えるのがよかったです。液晶もきれいで小さい画面でも見やすかった。ただ一点,無線LAN内蔵でないのが不便でした。PCカードスロットが1つあったので,そこに無線LAN用のカードを挿して使ってました。
レッツノートの素晴らしさを知ることができた一台ですが,HDDの調子が悪くなったため業者に依頼して換装後も調子が芳しくなく,モバイルPCの座はDell mini 10(7台目,一時一世を風靡したネットブックのひとつ)に明け渡すこととなりました。
けれども今回こいつも電源入れたら立ち上がってくれました。

参考:http://www.notebookcheck.net/Review-HP-Compaq-6720s-Notebook.9083.0.html
2008年~2014年
Core2DuoプロセッサT7250 2.0GHz,1.99GB
Vistaを避けてWindowsXP Professional SP2を選びたく,量販店の店頭売りでなく自分で構成をカスタマイズできるHPで初めて買ってみました。
当初,DELLにするか迷ったのですが,某非常勤先で,
「お盆休み中,酷暑でエアコンが故障してしまい灼熱地獄と化した某所のサーバルームで仮死状態になりつつも生き延びたのがHP製(I○M製のはお亡くなりになったそうです)であった」
と職員さんから聞いた話が印象的だったので,実機が見られる場所に行って確認した上で,HPにしました。
こいつも長いことよく働いてくれました。なおこの8台目Compaqは今回処分の対象にはしていません。
まだ動くXPマシンとしてしばらく手元に置いておこうと思います(決してネットにつないだりはしませんがスタンドアロンで使うことがある可能性が)。

  • 9台目:HP ProBook 4740s

参考:http://www.notebookcheck.net/Review-HP-ProBook-4740s-Notebook.84313.0.html
2013年購入,実働は2014年~現在
Core-i5-3360M 2.80GHz,8GB
XPからWindows7(Professional SP1)に以降するために購入したPCです。
2013年に買ったのですが,2013年は自分が入院したりプライベートがぐちゃぐちゃでPCお引越しの気力がなかったし,2013年度は非常勤先もXPのままだったのかもしれません(記憶が・・・)。
初のワイド画面です。届いたとき,”デカっ”と思いました(笑)。持ち歩く気にはまずなれませんが,ノートPCなのにせせこましい感がなくゆったりと使えるのはいいです。
実働開始後ちょうど3年目でシステム再セットアップと相成りましたが,ハードな使い方をしている割には機嫌よく働いてくれるのは何よりです。
こちらもメインの非常勤先がOSをWindows7から変えるまで(次はWin10?はたまたまた次の?)はメインPCとして使い続けるつもりです。

工学部ヒラノ教授とおもいでの弁当箱

工学部ヒラノ教授とおもいでの弁当箱

工学部ヒラノ教授とおもいでの弁当箱

いつの間にかまた工学部ヒラノ教授シリーズの新刊が出ていました。
ちょっと前,『工学部ヒラノ教授の介護日誌』を読んで,その内容の鬱さに「工学部ヒラノ教授シリーズはこれで最後になってしまうのではないか?」と思ったのですが,また新刊に出会うことができて,安堵しました。
幼稚園の頃から現在まで,その時々に食べていたものを軸とした思い出話の本です。
相変わらず面白かったですが,短くまとめると:

  • 母の食事はなんともまずかった(+長男三男の間でないがしろにされていた恨み言)
  • 妻の作る食事はうまかった

全15章のうち,11章以降は奥様が難病を発症されて介護する側=「食べる人から作る人に」なってからの話です。
そして2011年に中央大学を定年退職されほぼ同時に奥様を亡くされた後,工学部の語り部として執筆活動を軸にしたなんとも規則正しい生活ぶりが食生活を鏡として書かれています。
仕事と配偶者を亡くした後の心の空白は,そのような生活ぶりが唯一の支えになっているのかな・・・と拝見しました。

また同時に,これだけ食べ物のことを書けるのならば,まだしばらくは工学部ヒラノ教授の新刊を読み続けられるかな・・・と思ってみたり。

Firefox無罪?とHPPCでのWindows7リカバリ顛末記+α。

Firefoxがshockwaveプラグイン関係で激重になるのでChromeに乗り換えたと,昨日書きました。
しかし,Chromeに乗り換えてもPCを使ううちブラウザ関係だけでなくあらゆる動作が激重になり,例えばTerapadで書いたテキストドキュメントを名前を付けて保存するのに10分もかかったり,しまいにはexplorer.exe(エクスプローラーといってもIEの方じゃなくて!)がクラッシュするとか末期的なので,これはshockwaveプラグイン関係でブラウザが重くなっているだけじゃない,Windows自体に何か問題があるのではないか,と思うようになりました。
じゃあ,ということで,まず,Windows7の標準機能である「システムの復元」で動作が激重になりはじめる前あたりの状態に戻してみました。
でも,駄目でした。
ぐぐってみたら,「デフラグ」や「ディスクのクリーンアップ」をするといいかも,ということでしたが,デフラグはスケジューリングして定期的に実施していたので,「ディスクのクリーンアップ」を試してみたら,10Gくらいゴミをお掃除できたので,どうかな~と思ってみましたが,解決には至りませんでした。
それじゃあもう,Windows再インストールするか(Windows7+出荷時おまけソフトウェアのメディアは手元にある),と思い,PCのメーカーであるHPのサイトを検索してみると,どうも,HPのPCには,システムリカバリの機能がついているというじゃないですか!
HP PC - HP システムリカバリ の実行 (Windows 7) | HP®カスタマーサポート
私のHPPCには,「Recovery Manager」はインストールされていなかったので,「Windows7デスクトップ画面からのリカバリ」はできませんでしたが,システムブート中にF11キーを連打してリカバリープログラムを走らせることができそうなので,まずはマイドキュメント等個人的なファイルを外付けHDにコピーしてバックアップを取った上で,試してみました。
1回目は,最後の設定を行っています・・・的なダイアログが出るところまでは行ったものの,そこで延々と止まってしまい,しかもHDへのアクセスランプも点かないので,こりゃどこかで引っかかって駄目になってるわ,と思い,電源長押しで強制終了して,再度リカバリープログラムを実行することになりました。
2回目は,リカバリープロセスの途中で,インターネット接続(wifi)を設定するポイントがあるのですが,そこで自動的に接続するというオプションのチェックを外してみたところ,リカバリープロセスは無事終了し,PCは工場出荷時の状態に戻りました。
でもここからが長かった。
だって,工場出荷時の状態=Windows7 SP1だからさ,Windowsアップデートをかけないと,でしょ。
更新を確認,だけで日が暮れてしまうのではないかと恐る恐るやってみたら,思ったよりもあっさりと,209個の重要な更新プログラムがあります,と応答が返ってきた。
まーその209個をダウンロードしてインストールするのに延々と時間がかかるのですが,209個のうちどこまで進んでいる,というのが見えるのだけはよかったです。
Windowsアップデートを長らくしていなかったら,更新を確認するだけで一日仕事になったりする場合があるので(笑)
で,Windowsが”最新の状態”になったら今度はセキュリティソフトを入れて,各種アプリケーションを入れよう,としたところでハマってしまったのです。
lionusはNTT西日本のフレッツユーザーでありまして,NTT西日本フレッツは,1ユーザにつき1台まで「セキュリティ対策ツール」を利用可能なのです。要するにセキュリティソフトをオンラインで利用できるということです。
これをインストールせねばということで,NTT西のサイトにアクセスし,セットアップファイルをダウンロードしようとしたら,何故かnotfound的な対応が。
これ結構ドツボなポイントだと思いました。
つまり,自宅を無線LAN化している場合,無線LAN経由ではセットアップファイルが”見えない”のです。
NTT西レンタルのルータに有線でPCをつないでいないと,ダウンロードできない仕様になっているようなのです。
そうかそうか,とLANケーブルを持ち出しつないで,セットアップファイルをダウンロードして,「セキュリティ対策ツール」を再インストールしようとしたら,そのウィザードの中でインターネットの接続を設定するとかいうのがあったので,素直にそれに従いました。
NTTフレッツ関連のユーザIDとかパスワード的なものを入力して,順調に進んでいったのですが,プロバイダのIDとパスワードを入れるところで,頓挫してしまいました。
20年近く慣れ親しんだniftyのIDと,さっきまでwebmailを見るのに使っていたユーザパスワードを入れたところ,サーバにアクセスできませんとかで蹴られてしまうのです。
仕方がないので,そのステップを中止したのですが,とりあえずNTT西謹製の「セキュリティ対策ツール」は無事インストールできたようでした。
だがしかし!
インターネットに接続できなくなってしまったのです。
システムリカバリしたHPPCだけでなく,さっきまでフツーに無線接続できていたレッツノート(Window7)も,iPod touchも,ネットに接続できなくなっていました。
あちゃー。
何てこったい・・・と思いつつ,ついにNTT西のサポートに電話しました。
おぼこい若い女の子の声で,電話が込み合っていてつながりません,このままお待ちいただくか時間を置いてかけなおしてください,的な自動応答を繰り返し40分ほど聞いて,サポートデスクに通じました。
NTT西レンタルのルータ設定をブラウザから開く方法をご教示いただき,試してみましたが,どうもルータの中に入っているプロバイダ=niftyの接続設定がおかしくなっているようだ,ということで,niftyに聞いてねということになりました。
niftyのヘルプデスクに電話したところ,自動応答振り分け質問が何段階かありましたが,こちらはすっと人間につながりました。
そこでのやりとりからすると,自分は電話するまでに9回,パスワードを間違え続けているというログが残っていたようです。
webmailやら各種サービスを使うのに普段から何度も入力しているパスワード,間違い続けているって,どういうこと・・・?
何でなんでしょうねえと何だか間抜けなやり取りを経た上で,まあとりあえずNTT謹製のルータの設定を直接いじりましょうか,ということになりました。
ブラウザから再度,ルータ設定にアクセスして,件のパスワードを再入力してみたところ,問題解決しました。
うーむ。
よく分からん。
9回続けて打ち間違いするっていうことはあまり考えにくい。
NTT西謹製のセットアッププログラムが何か影響していた可能性があるかもです。
つまり,プロバイダのパスワード入力→送信時に何か余計な情報(文字列?)が付加されていた可能性です。
まー自分も人間で完璧ではありませんので,何ともいえませんが。
まあとりあえず,NTT西謹製の「セキュリティ対策ツール」もインストールできて,かつ,インターネット接続も回復したので,その後は,必要なアプリケーションをコツコツと再インストールして何とか自分環境を回復することができました。

ああ疲れた。1日仕事,いや8時間以上は費やしているので,それよりもっとですね。

ということで,愛するFirefoxはどうも無罪であった可能性高く,この記事もFF使って書いております。なお,FFは64bit版にしております(32bit版よりもShockwaveプラグインクラッシュしにくいらしい?)。
やっぱ愛してるよFF。

Firefoxさんさようなら,chormeさんこんにちわ。

Firefoxを長らく使ってきましたが,flashshockwaveに関連して固まるだけでなく,Windows全体を道連れにして固まってしまうことが連発されたため,さよならすることにしました。
次の相棒としては,IE・・・でもいいかもですが,色々な拡張機能を使ってみたいので,chomeを試してみることにしました。
NetscapeNavigator時代からの思い出があるので,忸怩たる思いですが,ウェブページを見ているうちに次第に応答しなくなり,ブラウザだけでなくシステム全体が固まってしまうのはマジ困るので,お別れすることにしました。
さようなら,今までお世話になりました。でも愛してたよ。FF。

監査人監査論―会計士・監査役監査と監査責任論を中心として―

監査人監査論‐会計士・監査役監査と監査責任論を中心として‐

監査人監査論‐会計士・監査役監査と監査責任論を中心として‐

読むのに思ったより骨が折れました。
けれども,面白かったです。
ベテラン会計士による,監査基準等の解説が最初にあって,続いて会計不正関係の判例の検討がなされています。
大和銀行NY支店事件など,同じ事件でも弁護士や法学者による判例検討とは,また一味違う内容と拝見しました。
この判決では何かこのへんまあいいか的に流されてるけれど,会計実務からしたらちょっとおかしいよね!みたいな突っ込みだな~というところがいくつかあって面白かったです。
以前,『命燃やして―山一監査責任を巡る10年の軌跡』を読んだときだったか,会計監査におけるリスク・アプローチなる言葉を知ったのですが,ちょっとぐぐってもよく分かりませんでした。
本書では最初のあたりでリスク・アプローチについて解説されていて,それを読んでもやはり実務を知らないせいかまだまだピンときていないのですが,米国から導入した,効率的効果的に会計監査ができるよ!のリスク・アプローチについてのエピソードのところで笑ってしまったので,少々長くなりますが,引用します。

pp.23-24
リスク・アプローチの考え方は,虚偽の表示が行われる可能性の要因に着目し,その評価を通じて実施する監査手続やその実施の時期および範囲を決定することにより,より効果的でかつ効率的な監査を実現しようとするものである。それは無用とされる監査手続を排除もしくは省略することができるという効果をもたらすことになる。
しかし,この思考体系には,逆の意味で監査リスクを伴っていることも忘れてはならない。たとえば,日本の監査法人の若手会計士が,代表してアメリカの研修(大手会計事務所による世界的規模で開催される研修制度)に参加して,帰国し,日本で,その研修の結果を披露(国内研修会)することになった。監査リスクの手法を導入したときには(提示された研修教材の中で),仮払金と未払費用(未払保険料,未払家賃などが含まれている)は,金額が小さいから,監査リスクが低いと判断して,「監査範囲から外してよい」という説明であった。それは「潜在的に存在する監査リスク」を無視したとんでもない判断である。
仮払金の内訳をみて,金額が小さいから外す,そのような判断は,職業専門家として会計士は判断すべきではない。仮払金の中に,弁護士費用が処理されていたならば,何らかの訴訟が行われているものとして,追加監査手続を実施すべきなのである。つまり,重要な監査の入り口をみつけたと考えるべきである。また,未払費用であるが,一般的には監査リスクが低い勘定科目であるが,提示されたものが未払保険料(火災保険料)と未払家賃であったから問題なのである。日本において,保険契約で立替払いは認められていない。もし,保険代理店が立て替えて払っていて,保険契約は継続しているとして,保険料さえ払っていなかったのか,また,家賃については,日本の慣行では,当月分の家賃は,前日末日までに支払うことになっている。その家賃が未払いであるということは,それだけ「資金繰りが苦しいのか」と判断をすべきで,それが職業専門家としての経験であり,懐疑心をもって判断し,追加監査手続が必要になる事例なのである。
このようなリスク・アプローチの考え方は,虚偽の表示が行われる可能性の要因に着目し,その評価を通じて実施する監査手続やその実施の時期および範囲を決定することにより,より効果的でかつ効率的な監査を実現しようとするものである。リスク・アプローチに基づいて監査を実施するためには,監査人による「各リスクの評価」が決定的に重要になる。そのためには,景気の動向,企業が属する産業の状況,企業の社会的信用,企業の事業内容,経営者の経営方針や理念,情報技術の利用状況,事業組織や人的構成,経営者や従業員の資質,内部統制の機能,その他経営活動に関わる情報を入手し,評価することが求められる。

勘定科目と金額の大きさだけ表面的にみて,本質的なところをみてないアチャーな例だよね,ということです。

この他,監査法人の設置が認められた経緯*1など,あーなるほどなー*2と,興味深かったです。

*1:事務所単位だと,特定の監査契約報酬に収入の多くを依存するため,監査対象に対する独立性が確保されない=お得意先の顔色をうかがって適切な監査ができない可能性,など。

*2:自分も,ちょっと前に担当した社労士調査データ分析で,顧問先企業に物言えるためには収入の分散=一定以上の顧問契約とか多角化等が必要,と考察したことがある。

ドイツリスク 「夢見る政治」が引き起こす混乱

ドイツリスク 「夢見る政治」が引き起こす混乱 (光文社新書)

ドイツリスク 「夢見る政治」が引き起こす混乱 (光文社新書)

ナチスの蛮行などがあるにせよ,一般的にドイツが嫌いという日本人は多数派ではないと思います。日独同盟などもあったし,少なくともドイツ人が日本に対して(一般的に)ネガティブな印象を持っているとはあまり思われないのではないでしょうか。
自分も,バッハとかすごいし,法律とか医学とかドイツからもってきているものが沢山あるし,お世話になりました的な感情はあっても,ネガティブな印象はありませんでした。
しかし,ドイツ人は日本人が思うほど日本のことをよくは思ってませんよ~ということが本書を読むとよく分かります。
著者は読売新聞のベルリン特派員を務め,現在編集委員の方で,ドイツ現地メディアやドイツの知識人等へのインタビューを通じて,ドイツってどういう国なのかということを独特の視点から記述しておられ興味深かったです。
タイトルにもなっている「夢見る」とは,本書では,ロマン主義的性向のことを指しているようです。
このドイツのロマン主義的性向と観念的に行動する傾向が結びついた結果,ドイツに,ひいてはヨーロッパ全体に不安定要因をもたらすのではないか,と著者は考察しています。

pp.181-182
歴史学者ヴィンクラーが,「シュビーゲル」誌(2014年4月14日号)に興味深いエッセイを書いている。
1920年年代のドイツでは,ドイツとロシアは気性が似通っている,という過度の思い込みが広がっていた。そのだしに使われたのがドストエフスキーだったが,トーマス・マンも含め知識人が魅了されたのは,ドストエフスキーの持つ,西欧の皮相的な合理主義に背を向けた姿勢だった。この西と東の思想闘争においてドイツがどこに位置しなければならなかったか,というと,東の側だった」
「ヴァイマール共和国時代は右派の政治家,軍人,知識人は,内政においては反共主義を掲げていたが,ソ連との協力関係強化に努めた。1925年に,後のナチ政権宣伝省ヨーゼフ・ゲッペルスは,ユダヤ的な国際主義を克服し,一国社会主義路線に転換したソ連に,『西欧の悪魔的な誘惑と腐敗に対抗するための盟友』の姿を見たのだった。」
プーチンは,同性愛支持プロパガンダ,フェミニズム,放蕩と戦う一方で,伝統的な家族形態と伝統的価値を支持している。こうしたすべてのことがキリスト教原理主義者や米国の右派の喝采を浴びている。かつてプロレタリア国際主義が成し遂げたことを,今やプーチンの保守的反近代主義が達成しているのだろう。まさに弁証法的転換であり,プーチンは今やヨーロッパの,それどころか世界の反動勢力のパトロンとなったのだ」

トランプ大統領がプーチンスキーな印象を受けるのも,うなづける・・・

pp.238-239
18世紀後半以来の「ロマン主義」との連続性を前提とするならば,緑の党や反原発環境保護運動にも,開明的な「西側世界」に反旗を翻すような非合理的な衝動,反科学主義,反進歩主義が宿っている,と見るのが適当だろう。
ロマン主義と現在のドイツを結びつけるとき,このドイツ人の自然との関わり合いの連続性という視点と,もう一つ,ドイツ人が認識し行動するときの観念性が継続している,と見る視点がある。それはドイツ人の政治下手,歴史認識における過度の倫理化を説明する視点でもある。
この二つの方向性がどう関連するのかは難しい問いだが,「自然=感性=非合理主義」と「人工=理性=合理主義」が対概念になることを前提とすれば,自然を理想視するドイツ人の魂のあり方は,必然的に理性より感性を重んじる「夢見る人」の性向,すなわち,経験論的に情報を集めて冷静に分析するよりも,非合理的情動に依拠して行動を急ぐ姿勢につながる,と説明することができようか。

「開明的な「西側世界」に反旗を翻すような非合理的な衝動,反科学主義,反進歩主義」は東方=(マッチョな価値観をもつプーチンが率いている)ロシアおよび,中国への親近感と接近をもたらしている,ということだそうです。
ロシアはともかく,日本に直接関係がありそうな中国のドイツへの接近については,以下の点をよく踏まえておくことが必要でしょうね。

p.218
繰り返すが,ドイツに屈服とも言える歴史認識を強いたのは,同国の過去の戦争犯罪の中心がホロコーストという,何人も肯定できない絶対悪,人道に対する罪だったからである。国際社会でまっとうな地位を回復するためにはドイツは謝罪するしかなかった。

p.219
一方で,歴史認識に関しドイツ知識人が抱く屈折した心理が存在する。第2次世界大戦後,ナチ・ドイツによる蛮行に対する国際社会の厳しい非難はドイツ知識人を苦しめたから,その心理的補償を得るには,「過去の克服」を徹底してそれを誇る,といった屈折した形をとった面があるのではないか。ドイツ語に「罪を誇る」(Schuldstolz)という言葉があるが,戦争に伴うすべてをドイツの責任として受け入れて謝罪することを続けるうちに,ドイツ人は,逆説的だが,過去の克服に関して,倫理的な高みを獲得したと信じ込むようになった。いわば「贖罪のイデオロギー化」が起こったのである。
そこに,日本が過去の正当化に拘泥することを倫理的に批判する,少なくとも主観的な優越性が生まれた。ドイツ人に対し,ドイツの過去克服の歩みが世界の模範であり,日本は邪悪である,と繰り返し語りかけることは,屈折した優越感をくすぐる働きをする。そこには,ナチズムの過去を糾弾され続けてきたドイツ人が,「道徳的に自分より劣った日本人」を発見して,バランスを回復する精神のメカニズムがあるのではないか。それは,素直にナショナルな感情を表出することをタブー視されてきたドイツ人がたどり着いた,屈折したナショナリズムの表現なのかもしれない。