希望の裁判所 ― 私たちはこう考える

「開かれた司法の推進と司法機能の充実強化に寄与することを目的とする、現職の裁判官の団体」日本裁判官ネットワーク編著の本です。
元裁判官で現大学教授によって書かれた,『絶望の裁判所』を念頭に置いたタイトルなのでしょうね。
司法制度改革,いろいろ言われているけれども,裁判は昭和の時代よりもこういうところがよくなっていると思うよ!ということを,現職および元裁判官(現在弁護士や大学教授),弁護士の先生方が寄稿されておられます。
門外漢には本書の内容の客観的評価はできませんが,「絶望」とこの「希望」の中間地帯に「ほんとう」の裁判所が幅をもって存在しているのだろうと思います。
つまりはどちらも読んでおく必要があると思います。
あちこちメモを取りながら読みましたが,まあ日本人てそうだよねえと思ったところ,引用しておきます。
第3部 希望の弁護士>弁護士の輝く時代へ 久保井一匡>6 裁判所に対して感じていること>(1)上からの改革~よくなってきた裁判所

p.192
このところの司法制度改革で民事裁判にしても行政裁判,刑事裁判にしても,裁判所は以前より非常によくなっていると私は考えています。日本の社会は江戸時代が終わって明治維新第二次世界大戦後のの戦後の改革,常に上からの改革,この平成の第三の改革にしても,常に上からの改革でした。
戦後の日本国憲法の制定にしても当時の日本の社会のレベルからすると憲法のレベルには達していなかった。明治維新のときも近代国家の建設といったところで,とても民衆はついていけなかったのであって,上からの力で無理やり箱を作ってその箱に国民がついていった。ですから,司法改革についても,現実のニーズに合わせて法曹人口を決めていったら,進歩というものがないのであって,まず1500人,2000人という箱を作って,その箱に合ったかたちで何年かあとで事件がついてくるというべきです。佐藤幸治先生に対して「現場のニーズを考えずに,査定せずに,大きな箱を作りすぎた」との批判がありますが,その批判は間違っています。上からの改革がなかったら日本の社会は変化しないからです。最高裁判所は範を示したでしょう?最近は伸び伸びとした判決を書いているじゃありませんか。滝井繁男さんは世論に乗って頑張ったわけです。最高裁が頑張ったら下級審も安心して頑張れる。

いい箱を作れれば成功するってことなんだろうね。
あるあるあるある,って思うけれども,箱を作る人の見識に依存してしまうのが困るよね。