太平洋戦争史に学ぶ 日本人の戦い方

タイトルの「日本人の戦い方」、そして「はじめに」に、

pp.4-5 ただ、戦後世代の人の手によるものだろうが、「組織の自律性、自己変革」といった新しい概念を切り口とした戦史が目立つようになった。もちろん、それ自体は大きな意味を持つ。しかし、中核となって太平洋戦争を戦った人たちは明治生まれの明治育ちで、「トップ・ダウン」「ボトム・アップ」という言葉すら知らない。やはり彼らが幼いころから慣れ親しんだ『四書五経』や『武経七書』からアプローチしたほうが、当時を支配した思想や心情を理解しやすいだろう。そんな観点でまとめたものがこの拙書となる。

とあったので、ほうほうと思って読み始めたのですが、個人的には当初の期待度の半分くらいしか満たされなかった気分です。
大昔に読んだ、
『失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)』
とか、
『失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇』
とかの感銘は受けませんでした。
特に、”『四書五経』や『武経七書』からアプローチ” とあったのでそのあたりの充実を期待したのですが、個人的にはあんまり書いてないじゃん?!と肩すかしされた感はありました。
ただ、奥付に「軍事史専門家」とあるので、その意味での資料を提供する意味はあるかなという感想はありまして、
個人的には第4章の「拭いがたい「一銭五厘」と「国民皆兵」という固定概念」「大量動員がもたらした困惑すべき事態」などで記述されていた、戦前の徴兵制に関する事実とそれに関連した事柄は、今まで類書で読んだことがなかったのでなかなか興味深かったです。それと同じ方向性で、いわゆる”特攻”に関する記述も自分にとってまずますの情報量でした。

最後の締めくくり:

p.264
 どうしてこんな惨状になったのか。これまでにも繰り返して述べてきたが、日本人はなにかと戦う時、目的と手段を取り違えたり、ただ戦うことだけを目的としてしまうからだ。そして目的を達成したかどうかは問題ではなく、「ここまでやった、やるだけやった」という自己満足感を得られればそれでよいわけだ。いろいろと頭を働かせて努力しているように見えるが、実のところ、精一杯やったという虚飾に満ちた空虚な満足感のためということになるらしい。これが日本人の戦い方の根底に横たわる行動原理なのだろう。

良くも悪くも情緒的、というか・・・