闇バイト―凶悪化する若者のリアル

本書の著者は、育った家庭環境がよくなく、「10代半ばまで非行の世界にドップリと浸かっていました」が、「同僚や先輩から「中卒は天然記念物」と馬鹿にされたことを契機に、23歳で一念発起し、通信制高校、大学、大学院と進学することで学び直しを試み」、犯罪社会学者として活躍されておられる方です。
保護司でもあり、裏社会関係者への豊富なフィールドインタビューと、それらをもとにした著者の主張が印象に残ります。
「使い捨てにされる者はやがて「失うものがない無敵の人」になる」
「負の回転ドアを回し続ける無敵の人」

p.186
 再犯という負の回転ドアを回し続ける無敵の人は、未来がある若い年齢であることが多いのです。彼らを社会的に排除し、口座も持たせない、携帯も持たせない、住居の賃貸契約もさせない、就職もさせない状態に置くことで、じつは、新たなシノギが生まれます。
 それはたとえば、ヤミ通帳であり、ヤミ携帯です。使い捨てにしたはずの人間をシノギのネタにする。骨の髄までしゃぶるのが半グレです。そして、彼らは、再び犯罪に走る(一般の仕事に就けないために、走らざるをえないのです)。

p191
 再犯者や累犯者は別としても、闇バイトに巻き込まれた初犯者をワンストライクでアウトにすることは、犯罪社会の人口を増やし、新たな被害者を生み出し続ける可能性がある。困窮して、脅されて、あるいは無知ゆえに闇バイトに巻き込まれる初犯者への対応をどうするのか――今後の半グレによる犯罪対策を考える上で、考えなくてはならない最重要課題であると筆者は考えるのです。

「やり直したいと思った時に一歩踏み出せる社会に」

p.204
 2013年から2022年までの過去10年間で特殊詐欺に関係して逮捕された者の数は、2万4244人

p.205
 この中に、反社会的勢力構成員と常習犯がどれだけ含まれているのかは不明ですが、かなりの初犯者がカウントされている可能性があります。そうした初犯者を、反社会的勢力構成員や特殊詐欺犯罪常習者と同様に、逮捕して刑事施設に入れることで、学校は退学、職場は解雇されるなど――社会的紐帯を切って排除することが現実的とは思えません。そのような厳しい処置は、裏社会の人口を増やすだけ、無敵の人を増やすだけです。何より、初犯者の社会的紐帯を切って前科者のラベルを貼って排除することは、将来的に新たな被害者を増やす可能性があり、改善の余地があると思います。