- 作者:中村 智帆
- 発売日: 2020/02/25
- メディア: 単行本
本のタイトルは「動物セラピー」となっていますが、正確には「動物介在プログラム」であり、10件の事例についての訪問しての観察調査、聞き取り調査、アンケート調査をもとにまとめられたご研究でした。
なお、「動物」でも「犬」のみに特化してまとめておられ、猫その他の動物についての知見はありません。
著者の方はもともと塾講師など子どもに接する活動をされていたようで、そのためか教育の現場に動物が”居る”ことによる効用についての考察が比較的しっかりしているように拝見しました。
p.194 さらに、重要点となる部分について考えたい。筆者が考える重要部分とは「介在」という言葉である。つまり「Assisted」である。
p.195
「介在」とは、「間に挟まって存在すること」の意味がある。この「介在」とは、「加わる・仲介する」を意味する。つまり、動物があえて自分の体をもって援助するのではなく、社会生成の現場に共に加わることに意義がある。動物は、クッションや潤滑油、そして、磁石やマグネットの役割をはたし空間に存在すること、人と人との間に入り緩和し互いを引きつける働きを促進する意味合いが強い。
p.195
よって、筆者が述べる「動物介在教育」とは、「ケアされる存在のペットが、教育の現場、つまり社会生成の現場に共に参加し、時間と空間を共有する中で互いに結びつくことで学びの融和をする」ということになる。
著者によるまとめ:
p.297
最後に、動物介在プログラムの組織的機能を要約すると、ヒューマン・サービス分野への犬の注意深い導入は、人と人との距離を縮め、互いの気持ちを共有する手伝いをし、そして、人と人との結びつきを強化する。人と人の距離を縮め、実にさり気なく構成員の樹心を通わせることを通じて犬自身も適切な居場所を手に入れることになる。また、その力が、組織の意欲や個人の意欲をも育て組織を活性させることも多いが、その力を発揮するためには犬を取り扱うコーチ(又はコーディネータ)の事前の環境整備が欠かせない。組織に犬が属することで、今後さまざまな組織に少なからぬ利益をもたらしてくれるものと筆者は確信している。