マンガ・アニメで論文・レポートを書く―「好き」を学問にする方法

大学図書館でなく,公立図書館で見かけ,あれ?と思ってざっと読んでみました。

「はじめに」より

 専門研究としての「マンガ学」「アニメ学」ではない領域で,マンガ・アニメで研究するとはいかなることなのか。本書は学生や教員の必要性に応えるべく,卒論あるいは修論のサンプル論文集となるように編んである。

p.6
「マンガ研究」「アニメ研究」で重視されてきた「表現論」「作家論」「作品論」に踏み込むことを,あえて避けるようにした。それらはマンガやアニメを研究するには,欠くことができないものであり,それぞれの専門家によって深く研究されているので,その方面の書物や論文を読んでほしい。マンガ・アニメの専門外の立場からは,「表現論」「作家論」「作品論」に深入りしないことで拓きうる展開があるのではないか。先に述べたように,それが本書の刊行の母体になった研究会の基本姿勢であった。
 本書に収めた論文はすべて,具体的な作品を思考のベースとしている。そのうえで,作品の内部へと深く探っていくのではなく,作品が生まれ,流通し,受容された社会・文化へと考察を開いていくベクトルを持っている。

文学研究のようなノリでマンガやアニメを研究するのが,既存の「マンガ学」「アニメ学」なんでしょうか。
そのあたり全然詳しくないので,よく分かっていないのですが,少なくとも本書掲載の論考は,特定のマンガやアニメ作品を題材にして社会学とかをやっている感じでしたね。

それはそれで,アリだと思うのですが,なぜそのマンガやアニメ作品をとりあげるのか?その作品でなければならない理由は何か?といったことが曖昧になっているのではないか?とは一部思いました。
あと,こういったマンガ・アニメを材料にした研究をする際に,マンガやアニメのアーカイブが未整備なのではないか?と思いました。
小説などを対象とした従来の文学研究ならば,あちこちの図書館,最悪でも国会図書館でその現物を手にすることができますし,そもそも書誌情報のデータベースがきちんと整備されています。
一方,マンガやアニメの網羅的な図書館とか,データベースの整備度ってどんな具合なんでしょうか*1
自分が”好き”なマンガ・アニメを論文の題材にするとしても,その他の(論文を読んだ)第三者がそのマンガ・アニメ作品そのものに容易にアクセスできる状況がなければ,”学問”にはなり得ないのではないでしょうか。
”好き”だから論文にしますた!はいいのですが,その扱っているマンガ・アニメを他の人が広く確認(批判的検討)できる状態でなければ,”学問”にはならないだろうと思うのです・・・

*1:まーマンガについては単行本や雑誌などの”書籍”として出版(市販)されていれば国会図書館に所蔵されデータベースにも入っているはずですが,所謂同人誌などはそれには入ってないですよね?!