災害文化を育てよ、そして大災害に打ち克て:河田惠昭自叙伝

資料等も含めると、500ページ近い分厚い自叙伝ですが、炎のような筆致でその分厚さを感じさせませんでした。
災害研究の第一人者の著者先生ですので、自叙伝と銘打ちながら、災害研究の個人史として読みごたえがあります。
色々と印象深いところばかりなのですが、中でも読んでいて思わずほんとに「え?!」と声が出てしまったのが、第2章「16 1983年日本海中部地震津波災害調査」の現地調査2日目にして、一緒に行った先輩の助教授が「明日、飛行機で帰る」と言い出したというところです。

p.86
理由は、今日一日の調査で、自分なりに理解できたので、帰ることにしたというわけである。突然の発言にあっけにとられ、しかも車の運転は君と技官が交代でやればよいから、自分は不要だろうというわけである。

全然他人事ながら、はああああああああ?ですよね~

p.86
喧嘩をすることもできたが、その結果、彼が一緒に来るようになっても、今度はあまりの身勝手さを知ってしまうと、むしろ不安定要因になりかねないのである。

かわたせんせい、冷静だ・・・

p.86
結局、彼は翌朝、さっさと鳥取空港から帰った。

さようなら~

と、こういうことだったようなのですが、続けて書かれていることに唸りました。
なるほど。途中でブッチする奴もいるということとかを学ぶこともありか。
最近大学でもPBLとか現場で学ぶとか盛んにやられているのは、”最近の若い者”にとっては大事なのかもしれないな~
(以下太字はlionusによる)

p.86
 大学では現地調査をいかにして実施するのかというような講義はない。しかし、私たちが土木工学科三回生の時、75日間の測量学実習があった。当時の建設省の地方事務所や都道府県土木部に実習に行くので、そのとき現地調査を経験できる。75日間というのは、夏休みと春休みのすべてということである。しかも、無単位必修科目となっていた。今では、このような課目は無くなり、期間を短縮して選択課目になっている。この実習で学んだことは大きい。要はデスクワークであれ、フィールド調査であれ、目的を目指して複数の関係者が協力して仕事をするマナーを学習できるからである。現在、インターンシップという名前で行なわれているのがこれである。