宮本常一 人間の生涯は発見の歴史であるべし

ミネルヴァ書房の評伝シリーズです。
今まで「私の日本地図」シリーズを何冊か読んだことがあり、
lionus.hatenablog.jp
なかなか面白かったので、この評伝も読んでみました。
宮本常一に直接師事された方がお書きになったので、人柄がいきいきと伝わってくるような感じでした。

pp.250-251
常一がこの研究所の所長になったことに批判があったらしい。なぜ「観光」にかかわるのかということである。観光地、観光化された、大勢の観光客など、あまりよくない意味に取られていることから、学者が観光にかかわるのをよしとしないことだったようである。
 「観光」の二字は中国の『易経』にある「観國之光 利用賓于王」に由来するとされる。これを現代風に訳すと、「その国の光のような、繁栄や賑わいを観ることで、訪れた人々が自分たちを国の王様に招かれた客のように感じ、その地域のためになることをする」ということ、簡単にいうと、「観光とは国の光を観ること」となる。ここでいう国は日本国の「国」ではなく、町、村、あるいは集落、組内を指している。
 常一がこの「国の光を観る」を声高にいうことはなかったが、理念に基づく指導でやって来る若者たちを「国の光を観る」ことのできる人間に育てたのは確かである。

今や「観光学部」なんて大学にできる時代なんだよなあ。