ある限界集落の記録―昭和二十年代の奥山に生きて

岡山県新見市という中国山地のそのまた山深い集落を故郷とする、ドイツ文学者による集落での暮らしの思い出話(記録)です。
ポツンと一軒家とか見ていると、山の暮らしは自力で色々しなくてはいけなくて大変だなあと思うのですが、それはまち育ちの人間の勝手な感想であり、その時代、そういうところに生まれたので、そのように生きているという暮らしがあったのだなと、しみじみと読みました。
「あとがき」より

p.225
 本書は個人を主役としている自分史ではない。あえていうなら集落の伝記である。したがって、本書に登場する固有名詞の人名や地名は特別の意味を持たない、単なる記号である。同じように消えゆく故郷をもって、同じような運命を辿った人々や地域の痕跡を残すと同時に、そのような運命を辿った人々や地域に対する鎮魂の意を表したいと念願したことが執筆の動機である。