”時代の風”をよむためにあくまでも貪欲な筒美京平と松本隆。

先日亡くなった作曲家の筒美京平についてのNHKスペシャルを見ました。
www.nhk.jp

沢山のヒット曲の作曲家としてお名前はよく拝見していたものの,その創作については知るよしもなかったので,事前の予想よりもずっと興味深く拝見しました。
その後,たまたまこの番組関係の記事を読み,
www3.nhk.or.jp

長くコンビを組んでいた作詞家の松本隆さんのコメントを拝見して,自分が以前書いたはてな日記の記事を思い出しました。
lionus-old.hatenablog.jp

松本隆さんが大学生たちと教室で対話していた番組について書いていたのですが,
今でいう”意識高い系”ぽい大学生に”売れる”こととマーケティングについて何か質問されたときに

マーケティングとかって,売れている曲を研究するとしてもさ」
「その曲は3ヵ月くらい前かに録音されているわけで」
「そしてそれが作られるのは1年くらい前の時点なわけで」
「だとしたら,こんな曲が売れるんだと追従する時点で,1年遅れになってしまうんだよね」
マーケティングとかいっても結局後追いじゃないの」
「(売れるものを作るためには)結局は自分のアンテナを張るしかないんじゃないかな,感性なんじゃないかな・・・」

とサクッと一刀両断し,
さらに,(確か他の学生に)どうやったら感性が磨かれるのか?と尋ねられて,

「どうしたらっていってもさ」
「僕,1日に1本映画を観てた頃があってさ・・・1年に200本とか」
「あと,小さい頃,図書館の本の棚のここからここまで全部,読んでやろうとか,友達と競争したりとか」
「最初から,これって決めてしまうより,ともかく何でもっていう方がいいんじゃないかなと思う」

とかってさら~りと受け流しながら斬っているのがすごかったなあと思いました。

先に挙げたNHKスペシャル関連の記事によると,松本さんは筒美さんに自分のレコードを聴かせたら「趣味で音楽できていいわね」って言われたと。
「趣味で音楽って作っちゃいけないのかなと。僕はそれまで趣味でしか音楽を作ったことがなかったから」と苦笑しながら番組でも回想されてました。筒美さんには「趣味」って言われちゃったのかもしれないけれど,上記の学生さんとの対話を見ると,マジの本気で「趣味」される人なんだと思います。一般的に言われる「趣味」・・・言い換えると遊び?でも遊びであってもマジの本気で遊ぶのもむっちゃエネルギー要りますよね。
そういう,マジの本気で「趣味」「遊び」する”変人”だったからこそ,

筒美さんの曲のアレンジを多く手がけた編曲家の船山基紀さんは、筒美さんが長年ヒットメーカーとして活躍できたのは、常に時代の変化を敏感に捉えようとしていたからだと分析している。

https://www3.nhk.or.jp/news/special/sci_cul/2020/11/story/kyoheitsutsumi/

常に研究を怠らず,

アメリカのチャートの動きが大好きなんだよね。最後のほうは、『アデルが』(イギリスの歌手)とか言ってた。さすがに早いなと思ったよ。僕なんかより、やっぱり全然詳しかった」

https://www3.nhk.or.jp/news/special/sci_cul/2020/11/story/kyoheitsutsumi/

松本さんも舌を巻くくらい,新しい音楽を追いかけていた”巨人”筒美さんと長くタッグを組めたのだろうなと思いました。
得がたい相棒というか,好敵手という感じだったのでしょうか。